用務員さんと私-夏休み・序-



試験に追われ、あっという間にテスト休みに入った我が校は、

次の週の登校日はあと数日。

夏休みが迫っていた。


「あ〜あ…一ヶ月以上も賈クさんと会えないのかぁ…」


そりゃあ、私だって友達と遊んだり、遠出したりしたいけど…。
毎日のように追いかけていた賈クさんに長く会えないのは、
淋しいな…。

…………


終業式は午前中に終わった。

未練がましく、校門近くから校舎を見ていると、
賈クさんが見えた。どうやら煙草を吸っているようだ。

うう、せめて賈クさんに挨拶したい…。

その思いが通じたのか、賈クさんが此方に気づいた。

「!!」

胡散臭い笑顔でちょいちょい、と手招きしている。
その笑い方にはちょっと既視感を覚えたが、
賈クさんに呼ばれた事で舞い上がった私はもう走っていた。


「っはぁ、はぁ…」

「珠美はやっぱ早いなぁ。陸上入ったら?」

「い、いやです!」

運動部なんかに入ったら委員活動に出れなくなってしまう。
私の趣味はもう、『学内掃除』といっても過言ではない程なのに
「珠美。あんた、暇だろ」

え、断定?断定なんですか?
確かに帰宅部だし、何か予定があるかと聞かれれば
美化委員の仕事しかない訳だけど…
なんか企んでそうな、その笑顔に不安覚えるなあ、私

「いや、まぁ…暇ですけど」


「あっははあ、じゃあ丁度良い。
 夏休みも仕事手伝ってくんない?」

「え!?」

願ってもない依頼が来た。

「お盆以外、週二で。
 今年はウチの学校で大会予選とか多くてね。
 校内が汚れるんだコレが…。で、あんたに手伝ってもらえないかと
「やります!!」

「…あははあ、いっつも食い気味だな、珠美」

呆れて見られるかと思ったけど、賈クさんは笑ってた。

「…で、だ。いつもの曜日で午前中来れるか?」

「大丈夫だと思います。えっと…私の他には…?」


「…いると思うか?」

「……思いません」

わざわざ夏休みに掃除しに来ないよね…。

「まあ、まだ声は掛けてみるけどな」

二人きりでもいいんですよ?
なんて大胆な事も言えず…

「が、頑張ってくださいね…!」

「おう、じゃあ火曜日にな」



次の火曜から、また賈クさんに会える…!!

帰路についた私は、家に着くまで無意識にスキップしていたらしい
母に見られて叱責を受けても緩んだ頬は戻せなかった。


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