用務員さんと私-始まり-


一年生の春

私は入学早々、恋をしてしまった

相手はこの学院の用務員の賈クさんという人

いわゆるエリート校と呼ばれる「鳳凰学院」

彼はそんな学院の校風には似付かわしくない、

紫のツナギを好んで着用している



「変な人…」


それが、第一印象。




「おー…また派手にやったな。大丈夫か?」

係の仕事でプリントを運んでいる途中、
盛大にプリントをぶちまけてしまった私と遭遇した賈クさんは
一緒に拾い集めてくれた。
終わったら「気をつけろよ〜」と何処かへ行ってしまったけど。


それが、キッカケ。



いつの間にか私は、いつも彼の所在を追っていた。


古くなって傷んだ場所を直したりしながら、校内を回っていること

昼休みは花壇の前でコンビニ弁当を食べてること

たまに、用務員室で昼寝をしていること



そして…

美化委員の先輩たちと仕事をしていること

そう、美化委員であれば、一緒に委員の仕事ができる
彼と、接点ができる…


私は迷わず美化委員に立候補した。
さして人気のある委員でもないのに力強く手を上げた私を怪訝そうに見る同級生もいたが、そんなのは関係なかった。


晴れて私は美化委員になったのだ。


「初めまして!1-Bの宮本珠美です。よろしくお願いしまっす!」

委員会の挨拶当日、私は張り切って賈クさんに挨拶した。
勢いよくお辞儀までしたが、顔を上げると彼はキョトンとして此方を見ていた。
あれ?挨拶失敗…?としょげそうになったとき、いきなり箒で頭を小突かれた。

「っ!?」

「初めまして、じゃないだろアンタ。プリント拾ってやったの忘れたかぁ?」


覚えててくれたんだ、私のこと…


嬉しくて嬉しくて、つい笑みがこぼれてしまう
にやにやが止まらない私を見て、賈クさんは少し焦ったように「お、おい打ち所が悪かったのか?大丈夫か珠美 ?」と聞いてくる。
その心配すら嬉しくって、もう誰がどうしようが笑顔が崩れない。

「変な奴…」


私が彼に抱いた第一印象を、彼に抱かせることになろうとは。


かくして、私と用務員さんの日々が始まった。


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