せめてもの仕返し



目を覚ますと自室の寝台の上だった。
現状を把握するために、まだだるい身体を起こし寝台から降りた。
窓から外を覗くと三日月が宵闇を仄かに照らしている。
気を失ったのは正午頃のはずだ。

そんなに長い間眠っていたのか…。

ここまで賈クが運んでくれたのだろうか…そう考えると胸が熱くなった。


気絶前後のことは曖昧にしか覚えていない。


――確か、賈ク様と二人きりになって…
からかわれて、何故か後ろから…だ、抱きしめられて……


『俺はあんたが好きだ』


あれ…夢だったのかな…



記憶に自信がない珠美は幻聴か、はたまた自分が見た夢なのか考え出したが直ぐに止めた。

夜も更けているし、今日はゆっくり休もう…


倒れるように寝台に身を沈めると、ふと枕元に書簡が置かれていることに気付く。


「なにこれ…」




…当分の休暇を与える。体調が戻ったら連絡するように…


書簡を開くと、賈クの字でしっかり書かれており、用件しか書いてなかった。
やはりあれは夢だったのだろう、と思った。

あの賈ク様が自分に告白するなんてあり得ない
でも、本当だったら……


「賈ク様…」


微かに痛み軋む胸を押さえ珠美は深く深く眠りについた。

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