せめてもの仕返し


「やぁ、張遼殿。わざわざこちらまで、どうしたんだい」

「あ、あぁ。件の書簡で…」


張遼も気付いてなかったらしい。
少し狼狽えながらも賈クに向き直り用件を話し始めた。
それを聞きながら、ちらりとこちらを見る上司。



まずい

何か嫌な予感がする



賈クの下で働き始めて早数年。
なんとなく分かるようになってしまった合図。
賈クは何か企んでいる


天下の腹黒軍師様はそれはもう悪戯好きで、直属の部下の珠美ももちろん被害に遭っていた。
実際は、素直でからかいやすい珠美が集中的に狙われているのだが。


普段の悪戯を応用すると彼の有名な『離間の計』などの計略が生まれるとか生まれないとか

賈クの智謀には尊敬しているし、並み居る群雄の中で賈クが珠美の一番の主君だと胸をはって言える。
賈クに仕える為に必死に勉強してようやく直属の部下になったくらいだ。

しかしながらとにかく、鬼才の悪戯は何をされるか予想がつかないのだ。
まして過労で倒れそうな身。仕事を増やされるかもしれない悪戯なんて御免だ。


逃げたい…!!

が、頼まれた仕事の報告も溜まっているし、何よりこちらへの視線はそれを許すものではなかった。


「すまない賈ク殿、助かった。では、私はこれで。」


しまった。
そうこう考えている内に、張遼将軍の話が終わってしまった…!

珠美の気持ちも知らず、張遼はさっさと話を終え部屋から出ていった。
賈クは張遼を見送って離れたのを確認すると、珠美のほうに視線を向けた。


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