手 私の恋人の手は骨張っていて細い。 女の子が好むような手もそう言われるけど、その好みの域を越えてしまっている。 そう、まるで痩せ細った病人のよう。 彼が病人なのは間違いないのだけれど、いつもはそれを感じさせまいと振る舞う彼。 彼の努力を嘲笑うかのような、この手が私は憎らしい。 だから何とかしたいと、抗いたくなる。 「ねぇ…郭嘉の病気って、食事とか制限はないの?」 「突然どうしたの?別に、平気だけれど」 「じゃあ食べて!たっくさん食べて、この細い手を何とかして!」 手を握り必死にお願いすると、一時きょとんとしたけど、すぐ何を言わんとしてるのか分かったようで、目を細めて私に言った。 「あぁ…大丈夫だよ」 私をたしなめる声はどこまでも優しく、そして儚い。 「私を…置いてかないで…」 掠れた声で言うその言葉にピクリと動く手。 「大丈夫…私は貴女を置いてはいかないよ」 彼は残酷な嘘を吐く。 学のない私でも解るほどの嘘。 この人を連れていってしまう病に勝てないのが、悔しくて悔しくて。 いつの間にか目に溜まり始めた涙を拭ってくれるのも…この、温かで細すぎる手の先。 私の髪を撫でるのも、この憎らしい手。 私と貴方を繋ぐ、きっと最後の場所。 |