男だって素直が一番


「ま、上がってくれ」

「お邪魔しま〜す…」

たまに宅飲みする同僚以外、人を上げるのは久しぶりだ。さほど広くないマンションの一室。リビングに通すと緊張した面持ちでつっ立っていたのでソファーに座るよう促してから、台所で温かいコーヒーを入れてリビングへ戻ると上着を脱いでお行儀よく座っていた。
未だチョコレートの話題すら出ておらず、珠美の手には何もないのを確認してがっかりしたのは秘密。どんな時も弱みをみせない大人の処世術。

帰りに寄ったスーパーで適当に買った食材とあり合わせの物で夕食を作ることになり、初めて一緒に台所に立ったが普段自炊と言っていたし、手際はまぁまぁ、と覗き見て観察していると逆に感心したように目をきらめかして此方を見てきた。
「賈クさん、流石だなぁ…」

「あははあ、独り身が長いとこうなるもんさ。…というか、呼び方戻ってるぞ」

「あ…文、和さん」

「そうそう、その調子」


和気あいあいと料理をする。そんなのも悪くない。
家にあった酒も振る舞いのんびりとテレビを見ながら食事を終えて後片付けを済ますと、やる事がなくなってきたのを感じたのかまた妙にドギマギしながらチューハイを飲む珠美を見て、ソファーに深く腰掛けリラックスした姿を見せてなるべく軽い口調で話しかける。

「泊まってく?」

「ッ!ごほっごほっ」

「だ、大丈夫か」

「ずびばぜ…むせちゃ、って」

珠美に近付いて背中をさすってやると徐々に落ち着いてきたのか、缶を一旦置き暫しの沈黙のあと、自分から俺に抱きついて小さく「泊まっていっていいですか」と遠慮がちに囁き据え膳食わぬは男の恥とばかりに駆り立てられたので素早く寝室に移動して俺たちは初めて繋がり、ちょっと張り切り過ぎて長い夜を楽しんでしまった。


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