用務員さんと私-夏休み・二章-


そうやって観察しているうちにホームセンターに着いてしまって、買い物もすぐ終わってしまった。

「やっぱ外出ると暑いな…」

「そうですね……」

店内の冷房で冷やされた体は、外の気温であっという間に熱くなっていく。この暑さからは逃れようもないし、大人しく学院に戻って作業を終わらせなければ…。汗を拭いながら気合を入れる。


帰り道、コンビニの看板が見えてきた頃に賈クさんは自転車のスピードを緩めた。

「そうだ、コンビニ寄ろう」

「え?いいんですか?」

「別に良いだろ。アイス、奢ってやるよ」

「わぁ!賈クさん太っ腹!!」

二人でコンビニの前に自転車をとめる。こ、これも中々恋人っぽいのでは、と頬が緩んだがしかし、ふと見たコンビニのガラスに映る私たちは、どうみても恋人には見えない…と一人で肩を落とした。何を気にする風でもなく、賈クさんはアイスのコーナーに歩いていってしまうので、私も急ぎ足で後を追う。

「どれがいい?」

「えーっと…じゃあ、これ…」

「ん、じゃあ俺はこれ」

私は季節限定のスイカバー、賈クさんはカリカリ君ソーダ味を選んだ。会計を済ませて、すぐそこにあった公園のベンチで袋を開けた。

何だか、幸せ…。この暑い夏の時期の、アイスがもたらしてくれる幸福感を舐めてはいけない。そして隣には好きな人。これ以上の幸せが、今あるだろうか…。

「それ、本当にスイカの味すんのか」

「しますよー!この種の部分はチョコチップなんですよ」

「ふーん…じゃあ、もーらい」

「あっ!!」

ばくっと大きな一口。賈クさんは説明する為に差し出していた私のスイカバーにかぶりついた。ほぼ半分食べられた事より、まさかの関節キスに戸惑いを隠せない。口を開いたままになってしまった私を見て満足そうに笑う賈クさんがすごく憎らしい。


「隙がある方が悪い」

「〜〜っ!!」


今の気持ちを言葉に出来ない。

そして、賈クさんの口付けた物を食べる勇気が出ない。

ただでさえ暑いのに、顔に、耳に血液が集中していくのが分かるほど熱くなる。
それでも、したり顔の賈クさんから目を離せず、キッと睨みつけると、「俺の方食べる?」と言ってくる。食べられない理由を本当は知っている筈なのに…。
何も出来ない私と、気にせずアイスを食べ終える賈クさん。


ぼとり

私が手に持っていたアイスが溶け出して、地面に落ちた。



空は青々とした快晴。暑い日の下、

私は賈クさんと間接キスは、できなかった。

蝉の鳴く声が、何処か虚しく響く。



夏休みの終わりは、もうすぐそこまで迫っている。




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