用務員さんと私-夏休み・一章- いつもの美化委員の面子ではなく三人で仕事というのもあって、新鮮で楽しい。 部活動以外で来る生徒は居ない為、期末前よりも静かな廊下を掃き終えるのに、そう時間はかからず、お昼前には掃除が終わった。 「こんなもんだろ。終わり終わり〜」 賈クさんの号令で、用務員室へと戻る。 冷房も何もない廊下は流石に暑くて、折角の化粧も少し崩れてしまった気がするが、まだ私にとって一大イベントが残っているのだ。 「あ、あの賈クさん…!」 「んぁ?」 用務員室に戻り、暑さでダレていた賈クさんに詰め寄り、持ってきていたお弁当を差し出す。 「お、お弁当…作ってきたんですけど、一緒に食べませんか!」 「珠美が?大丈夫か、それ」 「失礼な!母に教わりながらですけど、ちゃんと一生懸命…」 「冗談だよ冗談。丁度お腹も空いてるし、頂くとしようか」 「…私もお腹が空いたな…」 し、しまった… 郭嘉先輩の事をすっかり忘れてた…!! お弁当は二人前。当然、私と賈クさんの分。 夏の暑さからの汗とは違う冷や汗が流れ出す。 気まずい中、郭嘉先輩の方を見ると、手元に何か持っていた。 「あぁ、大丈夫だよ。先程あの子たちからお弁当を頂いたから」 よかったぁー!セーフ! 「そ、そうでしたか…じゃあ皆で食べましょう!」 ほっとしたら急にお腹が空いてきた。 お弁当を広げて、用務員室で昼ご飯。 なんだか変な感じだけど、賈クさんと一緒で、とっても嬉しい。 「賈クさん、卵焼きの味付けどうですか?」 「おう、しょっぱい方で正解」 「やっぱり!」 「ほう、それは興味深いね」 「あっ俺の卵焼き…!勝手に取るな馬鹿!」 「うん、とても美味しいね」 賑やかな正午の時間。 これから、こんな時が過ごせると思うと、 私は地に足が着かない所か、昇天してしまいそうだ。 浮かれた私は、帰ってからまたしょっぱい卵焼きを沢山作った。 甘党の父には文句を言われたが、美味しそうに食べてくれる賈クさんの姿が離れなくて、文句の半分も頭に入ってこなかった。 嗚呼、夏休みが美化活動だけで終わればいいのに… |