「世話になったわ」

「また遊んでな、銀時!」

帰る前に、四天の奴らと言葉を交わした。
こいつらの事、最初は不良だと勘違いしてたよな。全くそんな事なかったけど。


「銀時!」

バスに乗り込む直前、この合宿中一番悪目立ちした奴に声を掛けられた。

「あ?なんだよ、白石」

「これ、ケー番とメアド。携帯持っとらんのやろ?携帯買ったらアドレス教えてな」

「おう。サンキュー」

「昨日はありがとな。銀時とは仲良うやれそうや」

「二人共ドライだしな」

「せやなぁ」

にこりと笑うと、白石も笑い返す。
よし、いい笑顔だ。
最初よりもずっと自然だな。

一人満足していると白石に再び名前を呼ばれ、紙切れにあった視線を上げた。

と同時に軽いリップ音。

「……へ?」

「ほな、またな銀時」

「白石ぃぃぃぃ!!」

跡部の声で我に返る。
しかし自分で反応する前に跡部が俺の唇をジャージの端で擦りだした。

「ぶっ、あ、あどべ、いだいっ」

「あの野郎……!だからあいつに近付くなと言ったんだ!」

擦られ続ける中で、視界の端に白石を捉えた。
ニヤニヤ笑いながら、グーにした右手を左手の指でトントンと叩く。

一瞬意味が分からなかったが、自分の右手に握られた感触にピンときた。


バスに乗り込み、跡部の隣で紙を開く。
数字やローマ字の下に、綺麗な字でこう書かれていた。

『今のは本気やからな』

「……捨てろ」

「……跡部、勝手に見んなよ!」

「本気、だと!?この俺様がここまで我慢しているのに……どうしてこう虫が付くんだ……!」

何やら独り言モードに突入した跡部は無視し、手のひらの紙を見つめる。

少し顔が熱くなったのは跡部に言わないでおこう。




家に帰ったら、跡部に携帯が欲しいと言ってみようか。


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