ツナの部屋に到着。山本が刀で素振りをしていた。
「お、銀時!」
探したんだぜ、見つからなくて帰ってきたけど!
にっこりと笑って刀ごと振り向く山本が恐い。
右側にいる恭弥から一気に不機嫌なオーラが伝わってくる。
しかし何をするという事もなく、俺達三人は山本の次の言葉を待った。
「そうだ、さっき廊下でツナに会ったぜ。ディーノさんに会うとかでどっか行ったけど、多分もう戻ってくるんじゃねーかな」
十年後の山本は饒舌である。
重要な用件らしかったが、そんなに早く終わ――
「今戻ったよ」
「!?」
ツナがひょっこりと現れた。早すぎる。
ツナはやはりツナと思えないような笑みで皆を見回すと、俺で目線を止めた。
「やっと話せるね、銀」
「ほぁあ!?」
一瞬。一瞬で間合いを詰められて耳元で囁かれる。
逃げ腰には手が回されて逃げられない泣きたい。
「……いくら兄弟だからって、くっつきすぎだよ」
恭弥のピリピリとした声が後ろから聞こえる。
ツナは僅かに微笑ってから、俺を解放した。
「まぁ話っていっても残念ながら雑談じゃないけど」
「そ、そうなのか?」
てっきりまた山本と同じ目(膝乗り)に合わされるのかと。
「うん。銀が帰る前の注意事項をね」
言いながら頭を撫でてくるツナ。
「帰れるのか!?」
「勿論。俺が責任持って帰すよ」
「ツナが……」
そんな事もできるのか。
「本当はここに閉じ込めておきた」
「それで注意って何だ!?」
「そんな急がないでよ、寂しいな」
ツナはむすっとした顔(嘘っぽい)を作って、直ぐ笑顔で言った。
「第一に、帰る時は目を瞑ること。10年バズーカの故障で帰れなくなったみたいだし、違う方法で送るんだけど下手したら目が潰れるんだ」
「まじかよ」
「第二に、俺が目を瞑ってって言った後は、何があっても目を開けないこと。あっちの俺達の声が聞こえたら、よく確かめた上で開けてよし」
聞く限りで凄まじく危険な気がする。しかし、やるしかない。
「じゃあ、目を瞑って」
最後に、全員の顔を焼き付けてから瞼をギュッと閉じる。
帰ったら、ツナにこの話をしてやろう。
「そのまま、そのまま」
ツナだろうか、体を包み込むように抱きしめられる。
不意に、目の前に感じていた光が途絶えた。
「ごめん、銀」
ツナの消え入りそうな声が。
「もう俺は、銀には会えないから。でも、ずっと、大好きだよ」
「ばいばい、銀時――」
「――き、銀時!」
ツナの声に意識が浮上する。ゆっくりと目を開けば、ツナが焦った顔で俺を揺さぶっていた。
「……なにしてんの」
「銀!!」
よかった無事だったんだ!!
がばっと抱き着いてくるツナに事情を訊く。
どうやら、10年バズーカが故障してただのバズーカになった上、ランボの操作ミスで俺に当たったらしい。んで、ずっと気絶していたと。
「煙がひいたときいつもの銀のままだったから、てっきり10年後も成長してないのかと……」
「んな訳ねーだろ、ダメツナ」
リボーンがぴしゃりと言った。後ろにはランボだったらしき物体が転がっている。
「制裁は与えておいた。感謝しろよ」
「あー……うん」
何も言うまい。
ツナは曖昧に笑う。
「今回は銀が巻き込まれたしほぼランボが悪い訳だしリボーンはまあ……うん」
止めるか否か悩んだらしい。
ツナはやっぱりこうでなきゃな。そう思った。
直ぐに、何でいきなりそう思ったのか考えて、色々思いすぎじゃね俺って考えて、直ぐ考えるのはやめた。
なんだか変につっかえるような違和感があったが、それも、いつものやり取りの中で消滅していった。