「ぐぴゃぁぁぁぁあ!!」
また、リボーンがランボを泣かせたらしい。
「おいツナ、黙らせろ」
「無茶言うなよ!
……あぁ、もうっ」
ランボに近づくツナ。必死にあやそうとしている。
俺はそんな中で寝転がり、ジャンプを読んでいた。
「ほら、ランボ、泣き止めって」
「リボーンなんかよりランボさんの方が強いんだもんねぇぇぇ」
「まだかダメツナ」
リボーンの興味無さそうな態度にランボの泣き声が更に強くなる。
もうそろそろアレの出番だな。
ランボが十年バズーカを取り出したところで、ツナの息を呑む音。
ジャンプの脇からちらりと様子を伺うと、ランボが十年バズーカを構えている。
いや、それだけならよかったんだが…………。
ランボがバズーカを撃つと、いつものように辺りは煙に包まれた。
ボン、という音と共に現れたかと思えば、同時に妙な浮遊感。
そして、落下。
十年バズーカって十年前の自分と入れ替わるんだよな?なんであんなとこにいんだよ?
こんな高さから落ちて俺の体は無事なんだろうか。
直ぐに、どてかい建物にぶつかりそうになり、目を固く瞑る。
しかし、予見していた衝撃はこなくて。
「――銀、大丈夫?」
優しく微笑む人がいた。
「あ、わからない? 俺、ツナだよ」
「……嘘だっ!?」
だってこいつ、現在進行形で俺をお姫様だっこしてるし、死ぬ気の炎あるのにっつーか普段より冷静だし、明らかに俺よりでかいし。
ツナはおよそツナらしくない綺麗な笑みで俺の髪を撫でる。
さぶいぼ。
「とりあえず、中に入りなよ」
「入る、入るからおろせば?」
じたばた暴れてみても、全く微動だにしないこいつはツナじゃない。認めん。
そのまま横抱きで建物の中へ連れていかれた。
「ツナ、お帰りー」
「十代目!ご苦労様です!」
無駄に豪華な部屋に入ると二人の青年に迎えられた。
なんだか見覚えがあるような。
「……山本と獄寺?」
「そうそう!久しぶりだな、銀時!」
にっこりと笑う山本。十年経って外見は厳つくなったが性格はそのままのようだ。
「ちょっと出てくるから、二人共銀を頼める?」
ツナが問うと笑顔で頷く山本と、元気良く返事する獄寺くん。
それに笑みを深め、ツナは出ていった。
俺の両脇に二人を残して。
「お疲れ、銀時。いきなりこっちに来て驚いただろ?まあここにいれば他マフィア勢力が攻めてくることはないからさ、安心しろな」
山本が俺の頭を撫でながら話す事は、十年前の山本なら「ごっこ遊び」で片付いていたんだが。
「ま、俺が守るからどっちにしろ安全だぜ!」
「……オイ、野球バカ」
獄寺が漸く言葉を発する。
「十代目に頼まれたのは俺だ。俺が守るからお前は引っ込んでろ!」
あぁ、確かツナの右腕になりたいんだっけか。
山本の顔が一瞬歪んだ気がしたが、気のせいだったのか、次の瞬間には笑顔に戻っていた。
「『二人共』って言ってただろ?ちゃんと『二人で』守らないとな」
二人、という部分を強調して言う。
「……大体銀時!テメーも、何山本に頭撫でられて黙ってんだ!」
「は?俺?」
「厭がってねーからいいじゃねぇか。疚しいこと考えてる訳じゃないし」
なー、銀時、と更に強く撫でられ、俺の頭は更にもさもさになる。
流れる居心地の悪い空気。
「…………」
獄寺って怒る時こんな静かだったっけとか、二人ってもっと会話が直球だった筈だよなとか、色々思うことはあるが。とりあえず。
十年ってすげーな。