すく度さらさらと流れる橙の長い髪。
飽きる事なく神楽は何度も何度も同じ動作を繰り返していた。
「兄ちゃんの髪、めっちゃさらさらネ!」
「そう?ありがとう」
いきなり髪をすきたい、と言ってきた神楽は今、だいぶ長い時間神威の髪を弄っていた。
神楽に人形にされた神威は、それでも妹のする事に一切文句は言わずされるがままニコニコと笑っている。
それにまた満足したのか今度は髪を束ね始めた。
「神楽、結ぶの?」
笑顔を崩さずそれでも訝しむ様な語調で訊くと、神楽がうん、と頷いた為再び前を向く。
頭皮から伝わる感覚から、ただ結んでいる訳ではないらしい。
「さらっさらだからみつあみしてもきっとぐちゃぐちゃにならないアル」
「神楽の髪も十分さらさらだよ?」
「私みつあみできるくらい長くないヨ、兄ちゃんは長いから」
できたアル!
会わせ鏡で後ろを確認すると、歪ながらも確かに密編みに結われていた。
お礼を込めて頭を撫でると神楽ははにかみ神威に抱き着いた。
「兄ちゃん似合うアル!」
「うん、これなら髪も邪魔にならないし」
「そうアルか?じゃ今度から私がやってあげるネ!」
兄ちゃんにも教えてあげる、そう言う妹に神威は笑い掛けた。
「兄ちゃん、」
「ん?」
すっかり習慣化した神楽による神威の髪結い中。考え込む様な口調で己を呼ぶ神楽の態度にハテナマークを浮かべる。
神楽の結う密編みはだいぶ形も整うようになった。
「私今日から髪のばすヨ。みつあみできるくらい」
「そうなの?じゃあその時は俺がやってあげるよ」
「ほんと!?」
神楽はぱあっと顔を輝かせた。
「じゃあ、その時はぜったいおそろいにするネ。約束!」
神威は己の指を、差し出された幾分か小さいそれに絡ませた。