「ひ、日輪!」
「あら、月詠。帰ってきたの?」
勢い良く戸を開くと笑顔の日輪が出迎えた。
車椅子で近寄ろうとするのを静止し、フラフラと自分から歩み寄った。
「銀時から、聞いた。わっちの為にそんな、依頼なんて」
「いいじゃない。どうだった?銀さんとのデートは」
デート。
茶屋の女主人と同じ事を言われ月詠の顔が真っ赤になった。
「デートなんかじゃ……ありんせん……。
銀時は、日輪の依頼でわっちの悩みを――」
「そうねぇ。でも悩み相談なんか頼んでないわ。月詠の休憩に付き合ってあげて、って頼んだのよ」
月詠は何かを言おうとして、諦めた。
「でも、銀さんたら流石ねぇ。月詠の悩みに気付いたなんて。
まあ、それが自分への好意だって分かってたらもっと良かったのに」
「!?」
好意。
いや、まさか。
しかしそれは存外月詠自身の心にすとん、と収まった。
日輪と銀時の姿に痛んだ胸も。
勝手な妄想に「嫉妬」したのも。
マフラーから、身体中に熱さが巡ったのも。
日輪がいつの日か教えてくれた、「好き」の印なのだ。
「今じゃなくてもいいわ。いつか、銀さんに伝えてあげてね」
此処を――吉原を護る為に必死に、女を捨てて。
こんな自分が「好き」と伝えるなんて。
しかし日輪に言われると、きっと大丈夫な気がした。
取り敢えずは、
「銀時を探してくる」
それまでに彼が、少しでも自分へ目を向けてくれるように。