一応の片が付いた頃。
「お、い……山崎ィ」
漸く立ち直った土方がヨロヨロとやって来た。
「ひぃ!副長!いいいいたんですね……っ」
「テメーは何仕事サボってンだ?あ゙ぁ゙!?」
「あっ……いや!これはその、違くて!!」
山崎は土方の形相に怖じ気付く。
その姿を銀時が隠した。
「待て待て、多串君」
「!!、多串じゃねぇっ」
「今回は、俺が映画観たくて無理に誘っちゃっただけだからさ。多目に見てあげてくんね?」
今日は、噂が本当だったと知ってしまったし、沖田には薬を盛られるし、銀時は山崎を庇うし。土方にとって最悪の日だった。
だから、怒りに任せ山崎を斬る事もできる精神状態である。
しかし、それでも土方は耐えた。
目の前には(理由が山崎であるが)不安気に瞳を揺らがせる想い人の姿があるのだ。しかも、これは土方の行動一つで泣き顔にも、笑顔にもできる。
そして、土方が今一番見たいのは、自分へ向けられた銀時の笑顔だった。(因みに二番は山崎の亡骸であるがそれは割愛する)
ならば迷う事は無い。土方は自分の思う最もかっこいい声色で言った。
「ま、一般人を楽しませたっつー面では、今日の功労賞だがな」
言ってやったぜ。土方の顔は気味悪く歪んだ。
事の顛末を知らない人間からは二枚目の見せるニヒルな笑みに見えたが。羨ましい顔である。
山崎の顔はその気味悪さに引き吊っている。ありがとうございます、と漸く絞り出すと更に銀時の影に隠れた。
銀時は苦笑すると、土方、と呼んだ。
土方が顔を上げるのを確認して、微笑んだ
「ありがとな」
「っ、!」
案の定土方は顔を真っ赤に染め上げた。
銀時と別れ、真選組へと戻る道すがら。
悪鬼二人に挟まれた状態の山崎は先程食べたポップコーンを吐き出しそうな状態だった。
「なァ、山崎ィ……」
「詳しく話、聞かせて貰おうかィ……?」
上司二人からのイビりが酷くなるのは覚悟した方がよさそうだ。
(って……できるかぁぁ!!!)
銀時との関係が続く限り、山崎の受難もまだまだ続く。