客が次々と扉へ向かう中、巨大ムカデは迷わず真っ直ぐ山崎の方へ向かっている。
沖田曰く山崎の匂いを教え込んだらしいが。

銀時は腰が抜けた山崎の手を必死に引っ張っている。しかし思う様に進めず。
銀時の腰には木刀が無い為、ムカデを倒すのも難しいだろう。

「おい……あれ万事屋も危なくねぇか?」

沖田は答えない。訝しく思った土方は沖田の肩に手を置こうとするが。

「だぁんなぁぁぁ!!」

沖田は走り出した。満面の笑顔で。

「げっ!隊長……」

「あれ、沖田君?」

疑問符を浮かべる銀時ににこやかに説明する。

「ここに巨大ムカデがいるって通報があったんでさぁ。まさか旦那がいるとは……大丈夫でしたかィ?」

「俺は……でも山崎が、」

「チッ……そうですか。では、動かすのも大変でしょうからそこにいて下せぇ」

沖田はそう言うと、巨大ムカデの正面に立った。
ムカデは沖田を主人として認識しているらしく、スピードダウンしようとした、が。

「巨大ムカデ!観念しやがれェェェ!!」

沖田はその隙にムカデの胴体に一線。血も涙も無い。


土方はその間、動けなかった。否、今も動けない。

――ジュースに何か仕込みやがったァァァ!!

声も出なかった。






沖田はムカデの血を浴びながら銀時の元へ向かう。

「終わりやしたぜ。……今の俺には触らない方がいい。汚れるんで」

寂しそうに言う沖田に、銀時はう、と言葉を詰まらせた。
普段は何でもなさそうな顔をしながらも、やっぱり辛いんだな、と。

「沖田君……」

銀時は手を伸ばすと、沖田の頭に乗せた。
と同時に沖田が一歩前に出たため、相当に密着することになった。

「ありがとな」

「っ、はい」

沖田は感極まった表情をしてみせると、俯いた。銀時に見えない位置ではどす黒い笑みを浮かべている。
それを土方と山崎はしっかりと目撃した。






「にしても――旦那ァ、山崎とは何をしてたんですかィ?」

漸く落ち着いた(という演技をしている) 沖田は、やっと核心を訊いた。
銀時は言葉を濁してから山崎を見る。

「……まぁ、しょうがないですよ、旦那」

山崎が言うと、そうだな、と銀時は口を開いた。

「うん――誰にも言うなよ?何つーか……俺、山崎君と一応、付き合っ、て、たり……?」

語尾が段々萎んでいく。赤面して俯く様は大変可愛らしい、のだが。
やはり沖田にとっては気に入らないようだった。

そうですかィ、と呟く沖田は本心から気落ちしているようだった。


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