「あー、あー。
……全員知っての通り、ある隊士が我らの目を欺き、『奴』とコンタクトを取っている。現在も、会いにいってここにいない。つまり――今こそ実行する時である!」

ずらりと並ぶ隊士の前で、土方はスピーカー越しに叫んだ。

「山崎抹殺ゥゥゥ!!」

オオオォォォ!!
男達の戦きが辺り一帯を包んだ。




そもそもの事の起こりはある一人のかぶき町市民にある。

人望の厚い局長の近藤を倒し、鬼の副長と言われる土方を唸らせ、真選組随一の剣豪である沖田を手懐けた男、万事屋銀ちゃんを営む坂田銀時。
突如真選組の前に姿を表し、腐れ縁と文句を垂れつつも幾度と無く真選組を救ってきた彼を慕う者は少なく無い。色んな意味で。

胡散臭いと言いつつも密かに心を寄せる土方が、山崎に銀時を調べさせたのも、誰より――特に沖田より早く、銀時に近付く為である。
土方を恐怖の対象として見ている山崎が逆らう筈も無く、彼の報告を日々心待ちにしていた土方だが。

――坂田銀時が山崎退と良い仲である。

そんな噂を聞いて、ぶち切れた。


「山崎は今頃……万事屋と……………っ!!」

スピーカー越しのまま声を詰まらせる土方を陰で笑う者は今日に限っていない。自分も同じ気分であり、今憎むべき相手は山崎だからである。

「……いや、別に俺は万事屋がどうこうとか思ってねぇが!ただ、真選組の癖に男相手に色恋がどうだぁつってる山崎がムカつく――いや、市民を守るという義務の為にはプライベートなんか捨てろという事をだなぁ!!」

その言葉、そっくりそのまま貴方に返ってきます。
勿論この言葉も口に出したりはしない。



かくして山崎抹殺計画(仮)は実行されようとしている。
しかし男達は諦めの悪い事にまだ信じようとはしないらしい。あの手この手を使い真相を確かめようとしている。
例えば、普段門番をしている下っぱ。
彼は屯所の前を歩く一般人の会話に逐一耳を傾け情報を集めていた。銀時の顔の広さは中々のもので、それだけでも大体の近況を知る事ができた。
しかし、嘘の上手い銀時と、仮にも監察の山崎である。中々二人についての詳細は分からなかった。

一方で、発案者であり山崎が銀時に近付くきっかけを作ってしまった張本人は苛々と書類仕事を片付けていた。
単純だが一歩間違えば不祥事に発展しかねない作業。だが土方の頭は別次元に飛んでいた。

――今頃山崎は万事屋の所に居やがるのか、仕事ほっぽって。
あ、いや、俺が万事屋に張り込めっつったんだがよ……何で仲良くなってやがんだチクショォォォ!!!

「副長ォォォ!大変です!山崎の奴……って、あ、すいません……」





「机を持ち上げ怒りを爆発させる土方の姿に、隊士はびびって逃げ出したのであった」

「何言ってやがる、総悟」

「本当の事でしょう?」

逃げた隊士の代わりに呼びに来た沖田から知らせを受ける。
どうやら噂は本当らしい。ある一人の隊士が神楽を酢昆布で釣って手に入れた情報だから確かだろう。

「何でも、今日は一日デートらしく。こっちは仕事してるってーのにねェ。下っぱの癖に」

「デッ!?行くぞ総悟!!」

切羽詰まったように言う土方に、沖田はやれやれと首を振った。

「……今は山崎が敵だから協力しやすがね、山崎を蹴落としたら真っ先にあんたを抹殺しやすから」



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