※似非土佐弁注意






普段から、常に攘夷志士の取締りやら上からの理不尽な命令やらで殺伐とした気風の漂う真選組屯所。とりわけ拷問室や取調室はその雰囲気が強い。
しかし今日は、そんな空気を打ち消す程に明朗な笑い声が取調室を支配していた。

「土方さん、どうです?少しは進みやしたか?」

余りに時間が掛かり過ぎたのだろう、沖田が愛用のアイマスクを額に付けたまま室内に入ってきた。

「コイツ、日本語わかんねぇんじゃねーの?会話が成り立たねぇ」

「土方さんが日本語を喋ってないんじゃねーですかィ?マヨラ星人コノヤロー」

「総悟ォォォ!!」

何時もの調子で立ち上がり刀を抜こうとする。しかし、それは場にそぐわない笑いに遮られた。

「あっはっは〜、愉快な人等じゃの!!」

思わず戦意を喪失した土方は、向かいの席に座る男をまじまじと見つめた。
今の会話のどこが面白かったのだろうか。

さっきから取調室を無駄に明るくしているこの男、あれで快援隊という宇宙規模の会社の社長らしい。
小型船で地球に戻る際に墜落してしまったらしい。本人も船も無事な為、それだけなら真選組の出る幕ではないが、そこが偶々真選組の追っていた攘夷派の情報交換場だったらしく、更に、偶々情報を交換している真っ最中だった事もありこうして形式だけでも取り調べという形になったのだが。

「いや〜儂ぁ船酔いば激しくてのぉ、操縦不能になったぜよ!」

「あはは〜、陸奥に見つかったらふぐり潰されるぜよ!」

とまあ、人の話を聞かない上に世間話をしているかのような気軽さ。明らかに頭の軽そうな男に短気の代名詞、土方の我慢の糸が更に削られていく。
本当に社長なのだろうか。嘘吐いてるんじゃないか。
思うのはそればかりだが、小型船にあった身分証には顔写真と共にはっきりと『坂本辰馬』の文字。
信じられないが信じるしか無い。

土方は刀に添えられた手を引っ込めると、再び深く座り直した。
沖田は大人しくなった土方に舌打ちをする。しかし未だ響き渡る大声の所為で土方の耳に届く事は無かった。

「再開するが、いいな?」

「おお、忘れちょったぜよ!」

何がそこまで面白いのか。
沖田は興味深そうに前のめりに動いた。

「そもそも、何でそこまでして地球に来たんですかィ?」

「儂ぁ地球の女しか受け付けんきに!」

「……おいおい、そんな事で会社ほったらかしにして良いのかよ」

土方の呆れたような語調に気付かないのか、単に無視しているのか。

「理由ならまだあるぜよ」

坂本の笑顔は変わらない。

「かぶき町にいる知り合いの顔ばちくっと拝んでやろぉかと脱け出したんじゃが、そういや土産を置いてきてしもーた!」

前言撤回。頭は軽そうなんじゃない。何も詰まっていないんだ。

「あぁ……そう」

坂本と話したこの時間だけで、土方の顔は既に派手な斬り合いその後状態である。
もういいや、攘夷志士と関係無さそうだし。完全に精気は吸いとられていた。

「もういいや。名前とか状況とか全部訊いたし。帰ってくれて構わない」

「ほーかほーか、良かったぜよ!」

投げ出しやがって土方コノヤロー、という沖田の毒もあっさり無視する。

「そうじゃ、道を教えてくれんかのぉ?ここらに来るのは初めてなんじゃ!」

「じゃ、俺が行きまさぁ」

土方が沖田を睨み付けた。

「おお、日本の警察はなんて親切なんじゃ!万事屋金ちゃんっちゅうとこなんじゃが、わかるかのぉ?」

「「え」」

金?


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