日常編 | ナノ
1

何だか身体の調子がおかしいと感じて、部屋に常備してある体温計を手に取る。計った結果は七度五分だった。
微熱とはいえ、久々に熱を出した。昨夜はそこまで冷え込んでおらず油断して薄着のまま寝たのだ、当然といえば当然である。
それにしても。
体温で十分温い毛布の中で更に丸まる。今日は一段と寒い。暦の上では最も寒い月ではあるが、冬ってこんなに寒かったっけ?

その疑問は駆け込んできたツナによって解決した。

「銀、雪が降ってる!」

カーテンを開けられて、常より眩しい光が部屋に差し込んでくる。眩しさに目を細めつつ光源を辿っていけば、いつもと違う景色が広がっていた。

「うわ、道理で寒い訳だ」

世間では温暖化だのと騒がれ、一年間で雪が降らない年もあるからか、俺の身体は雪に馴れてはいない。急激な温度変化に薄弱な免疫力が敵わなかったということだ。見た目俺よりもひ弱そうなツナは元気なのにな。
立ち上がってバレないうちに体温計を引き出しにしまう。微熱なんだから問題ないだろう。窓から外を眺めるツナの隣に行くが、やはり薄いパジャマでは寒すぎる。同じくパジャマ姿だったツナに声を掛けて、一緒に着替えることにした。

俺たちの服は基本的に、母親がそれぞれに合ったものを母親の好みで買ってくる。
ツナも俺も別段センスに難がある訳ではないが、母さんのセンスは中々のもので、いつも二人に合った服を購入してくる。息子から見てもあの目利きは素晴らしいと絶賛したい程だ。

それは良いとして、着替えを済ませてからリビングに行くと、何やら騒がしい。
いつもの如くランボが好き勝手騒いでいるのだが――イーピンやフウ太も何やらそわそわと落ち着かない様子だ。

「どうしたんだろ」

ツナが疑問を素直に口に出すも、まあいいか、と早々に食卓に着く。
と、リボーンがいきなり爆弾を投下した。

「ツナ、学校に行くぞ」





「何でこんな時に学校で雪遊びなんだよ!!」

体をできるだけ丸めながらツナが叫ぶ。だから手袋してこいって言ったのに。中も二枚しか着ていないし、そりゃあ寒いだろう。
対する俺はばっちり防寒対策をしている。マフラーと手袋は勿論、ヒートテックの上にシャツ、セーターを着込んだ上コートを羽織っているという完全防備。勿論靴下は二枚重ねである。雪に反射して普段よりも眩しい視界を考慮して今日は帽子とサングラスも完備だ。なんて完璧な装備なんだろう。

俺達の回りをお子様三人衆はくるくる回る。雪に相当テンションが上がっているようで、早くも雪まみれになっている。

「いいじゃねぇか、たまには。雪なんて滅多に降らないし」

「うう……」

どうせ家にいても子供のお守りをしなければいけないのだ。折角だから雪で遊ばせてもやりたいしな。
俺の考えを悟ったツナは、恨めしそうに子供達へ視線を投げてから俺を睨みつけた。

「というか!銀は何で外に出てるんだよ!」

「は?」

「熱あるんだろ?」

なんとまあ。
隠し通せていたと思ったのだが、そこは流石双子である。微熱であれど何か異変を敏感に感じ取ったらしい。
時々ツナは妙に鋭くなるから困る。

「だーいじょうぶだって。八度越えてなきゃ平熱平熱」

「平熱低い癖に何言ってるんだよ!銀は微熱でも気を付けなきゃいけないのに……まったくもう……」

「だって俺も雪で遊びたかったし」

「そうだろうと思ったよ……ちゃんと体調悪くなったら言ってよ?」

「おう、ありがとな」

何だかんだで俺のことを考えてくれてるし、俺の無茶も許してくれるし、やっぱりツナは世界一良い子だ。うん。
にっこり笑ってお礼を言えば、ツナも困ったように笑い返す。ただでさえ、主にランボという悩みの種がいるのに、更に俺の体調まで気に掛けなければならなくなったのは多少申し訳ないと思う。だが、俺は雪の日に外に出たかったのだ。



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