日常編 | ナノ
3

「銀っ……」

「……うごっ」

唐突に意識か浮上した。目の前にいるのは愛しのマイブラザー沢田綱吉である。忘れやしないこの爆発頭。
ツナは元々情けない顔を更にくしゃっと歪めて俺の顔色を伺っている。
薄目だったのをいつもの大きさまで開いて目を合わせると、ツナは驚いたように目を丸くしてから柔らかく笑った。

「よ、よかったぁ……気が付いた……」

どうやらここは俺達の部屋らしい。額には冷えピタが貼られていて、きちんとパジャマに着替えさせられていた。

「熱あったんなら言ってよも〜。普段の銀からは考えられない行動だったから驚いたんだからな〜」

「な。俺もびっくりした」

あんなシチュエーションで、驚き叫ぶのは仕方ないだろうが家から飛び出すなんてありえないだろう。熱で判断能力やらが抜け落ちていたらしい。確かにその前からぼーっとしていた気はする。涙も出てたし。
だが、そんなに熱があったにも関わらず全く気付かなかったのだ。それをツナに言うと、ツナは小首を傾げた。

「なんだろ、久しぶりだったからかなあ?」

「久しぶりで倒れるまで熱に気付かない俺は相当鈍感だな」

「あはは、まあしょうがないよ。きっと最近疲れすぎてて分かんなかったんだよ。……あ、そうだ。ディーノさんも分かってはくれてたけど、ちゃんと謝っておいてね」

「ディーノ――そうだ、ディーノに捨て台詞を吐いたんだった……」

謝るのは俺の一番苦手とするところである。しかし大した非の無い人間に馬鹿と叫んでおいて知らんぷりというのはいただけない。それにこれからのツナのボスとしての交流の妨げになるかもしれない。仮にも高い立場の人間なのだ。俺が原因というのは兄として許せないな、うん。

「うう……わぁったよ、後で謝る」

「うん。――にしても、久しぶりだったからちょっと面白かったよ」

唐突にツナが笑い出した。何のことやらよく分からない。

「なんだよツナ」

「ふふ、いやー……銀ってさ、高めの熱が出ると頭が混乱しやすくなるよね。む、昔銀が高熱出した時もぶふっ」

「……思い出した!だからもう言うな馬鹿ツナ!!」

「あっははは!熱ある時以上に真っ赤!」

「うううるっせぇ!」

爆笑するツナに怒る俺。
一頻り笑って満足したのかツナは漸く笑い声を止めて腰を上げた。

「じゃあ、ディーノさん呼んでくるね。安静にしてなきゃダメだよ!」

「おう、悪いな」

大事ではないのだ。どう謝ろうかと思案しているうちに、眠気が勝ってくる。途端に謝罪のことなんて頭からすっぽぬけて、睡魔の誘うままに瞼を閉じた。




その後ツナが気を使ったのか一人でやって来たディーノに、暫く寝顔を観察されていることに気付いてまた絶叫する羽目になるのだが、ここでは割愛させて頂こう。

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