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夕食時。
「さあ、何でも聞いてくれ、かわいい弟分よ」
ディーノが泊まる事になり、さっきからずっとこんな調子だ。
相当弟分が嬉しいらしい。全力でかわいがろうとしているのがまるわかりだ。ツナはあまり喜んではいないようだが。
「そーいやツナ、お前ファミリーはできたのか?」
「今んとこ、獄寺と山本と銀か。あと候補は、雲雀と笹川了平と……」
「兄弟と友達と先輩だから!」
「俺を入れるなコラ」
勝手に答えるリボーンに二人で突っ込む。
何故かディーノは驚いたようで。
「銀は違うのか?」
「ったりめーだ」
「そうか…双子って変に似てるんだな」
まぁ、体も弱いしな。
そう言って笑うディーノに俺は生返事で応えた。
体が弱い。確かにそうだが、最近は体調が良い日が続いていた。だから体の弱さを引き合いに出すのは果たして正しいのか良く分からない。
まあマフィアになりたくないのでそれは口に出さないでおくが。
「まぁディーノ君、あらあら、こぼしちゃって」
母さんが笑ったかと思えば、ディーノの手元に落ちる飯を拾った。見れば、ディーノの周りにはぼろぼろと飯が落ちている。
リボーンが呆れたように言った。
「ディーノは部下がいねーと半人前だからな」
「はぁ!?」
つまり、部下がいない限りは何も出来ないツナレベルということか。……いや、それは言い過ぎか。ツナより強いのは確かだし。
黙々と食べながら考える。
ぼうっと考えていると、いつの間にか俺は一人でいる事に気付いた。
まさか退出にまで気づかないとは。
「あれ」
何やら風呂場が騒がしい。
皆そこにいるのだろうか。
様子が気になったのもあり、そっと風呂場に歩いていった。
――ツナの後ろ姿が直ぐに目に飛び込んできた。
そして、リボーンも発見。
何をしているのか訊くべく俺はツナの肩に手を置いた。
「おい、ツナ――……」
「あ、銀……。…………」
「……っ誰だぁぁぁぁ!!つかさっきこんな顔見た気がするぅぅぅぅ!!」
絶叫。
一瞬で頭が混乱して、体がかあっと熱くなる。
後ろ姿はツナで、でも、じゃあツナはどこだよ?
ディーノは慌てたように手の中のカメを見せた。
「お、落ち着け銀!!俺達はコイツを止める為にだな、そうだそいつはロマーリオと言ってだな、」
「でぃ、ディーノ、がやった――うわあぁぁ!!ディーノの馬鹿ぁぁ!!」
「えっ銀、なんで泣いて、」
全員の顔が固まったのを見ることなく、俺は家を飛び出した。
暫く走って、夕方の冷えた空気に熱も感情も冷やされたようだ。
今更になって羞恥が込み上げる。
騒いだことは恥ずかしいのだが、でも無理はないと思うのだ。
だってツナがあんなダンディーに……。
ツナがオッサンに……。
ツナが……。
……そうかあれは幻覚だ。
立ち止まる。
いきなり頭がぐらぐらと揺れ出した。やばい、前に進めない。
立ち止まる。急に体が鉄のように重くなった気がした。思考も安定しない。ああ、この感じには覚えがある。最近すっかり忘れていた設定だから、自分でもこうなるまで全く気づかなかった。幻覚を見るまで酷かったなんてなぁ。
ここまで放置した場合、いつも――。
Uターンして、どんどん歪む視界の中へ足を踏み出そうとする。
その瞬間、体が前のめりに傾いた。
「銀!」
自分を呼ぶ慌てた声に笑みを溢す。
これで安心して倒れられると、力を抜いた。
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