日常編 | ナノ
2

我が家の玄関先が何やら騒がしい。

「たでーまぁ」

ふざけた口調で言い、玄関を潜ると下の方に小さな衝撃を感じた。
見てみると、小さな女の子がぶつかってきたようだ。
またうちの母親が引き取ったのか、と軽く考えながら話し掛ける。

「おい、大丈夫か?」

「※☆@£!」

「あ?」

女の子が顔を上げたかと思えば、何か言葉を叫んだ。

「『カリフラワーのお化けだ!』と言っているぞ」

いつの間にか側にいたリボーンが通訳する。
カリフラワー?

「……って、髪の毛の事かぁぁ!!!」

「どうしたの――ってイーピン!眼鏡掛けろってば!!」

騒ぎを聞き付けて降りてきたのかツナが叫ぶ。眼鏡を女の子に渡すと、掛けるように促した。
女の子はおずおずと眼鏡を掛けると俺を見上げた。

「……%¥&◎」

「『……真っ白な男の子がいる』と言っているぞ」

「まあいいけど」

カリフラワーよりは良いが、真っ白って。一応制服に色があるし目の色も赤だし。
ツナはほっと息を吐いた。

「銀、こいつはイーピン。これでも腕利きのヒットマンなんだって」

「へぇ」

それから、ツナにこれまでの経緯を説明される。
こんな歳から殺しなんてなぁ。しかも視力悪いのか。将来が不安だ。

「大変だなぁ、お前」

頭を撫でてやると、「謝謝」と嬉しそうにお辞儀した。
ランボより素直で可愛い。

「で?やっぱりうちに住むのか?」

ツナに訊く。ツナはやれやれと肩を竦めた。

「分かってたけど、母さんがね……」

「いいんじゃねぇの?ランボより可愛いから」

「銀!?」

俺の発言にツナは目を丸くした。

だって可愛いし。ランボなら帰る所があるんだろうから追い出しても平気だろう。

「……えぇー」

ツナがぽかんと開けた口から辛うじて声を洩らす。

「だが一つ、解せない事がある」

ツナとイーピンが一緒に首を傾げた。
なにこれ可愛い。

「何故俺はカリフラワーなのにツナは人間に間違われたんだ……」

「果てしなくどうでも良かったー!!」










という訳でうちに住む事になったイーピンだが、問題はあの馬鹿牛である。イーピンにちょっかい出さなけりゃいいが。
ツナ、リボーンと三人、様子を見守る。

「やーいちょんまげ頭ー!!」

ごんっ

「……ぐすっ、お前のせーで銀時に怒られたぁぁぁ!!」

さっきからこの繰り返し。
ランボがイーピンをからかい、俺が粛正し、ランボが泣き喚く。
ランボも良く懲りないものだ。いい加減学習しないと一生頭にアイスクリーム乗っけたまま過ごす事になるぞ。

「銀……程々にしてあげなよ」

呆れたようにツナが言う。

「同年代と仲良くするのは大切な事だぞ」

「そうだけど……流石にランボが憐れだよ」

「そうか」

ツナが言うなら。
俺はしゃがんで、未だ泣き続けるランボの上になるべく優しく手を置いた。
ランボがゆっくりと俺を見上げる。

「ランボ」

「……?」

「俺だって、お前が意地悪しなきゃお前を怒ったりしねーよ。イーピンがお前に何かしたか?」

「……ううん」

「だろ?お前がやってんのは、ただの我が侭だ。
相手に悪意が無いなら、お前もそれなりの態度を見せろ。きっと相手もそれを分かってくれるよ」

首を傾げるランボに笑い掛ける。

「仲良くしろ、って事だよ」


もさもさの頭を一撫でして立ち上がる。

「す……凄いな、銀」

「…………よくそんな言葉がすらすらと出て来るな」

ツナとリボーンの声に曖昧に笑って応えると、部屋に戻った。実は適当に引用したものを継ぎ接ぎにしただけである。



後からツナに聞いたことだが、ランボのからかい癖は少なくなったらしい。
俺の前でだけ、だが。

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