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我が家の玄関先が何やら騒がしい。
「たでーまぁ」
ふざけた口調で言い、玄関を潜ると下の方に小さな衝撃を感じた。
見てみると、小さな女の子がぶつかってきたようだ。
またうちの母親が引き取ったのか、と軽く考えながら話し掛ける。
「おい、大丈夫か?」
「※☆@£!」
「あ?」
女の子が顔を上げたかと思えば、何か言葉を叫んだ。
「『カリフラワーのお化けだ!』と言っているぞ」
いつの間にか側にいたリボーンが通訳する。
カリフラワー?
「……って、髪の毛の事かぁぁ!!!」
「どうしたの――ってイーピン!眼鏡掛けろってば!!」
騒ぎを聞き付けて降りてきたのかツナが叫ぶ。眼鏡を女の子に渡すと、掛けるように促した。
女の子はおずおずと眼鏡を掛けると俺を見上げた。
「……%¥&◎」
「『……真っ白な男の子がいる』と言っているぞ」
「まあいいけど」
カリフラワーよりは良いが、真っ白って。一応制服に色があるし目の色も赤だし。
ツナはほっと息を吐いた。
「銀、こいつはイーピン。これでも腕利きのヒットマンなんだって」
「へぇ」
それから、ツナにこれまでの経緯を説明される。
こんな歳から殺しなんてなぁ。しかも視力悪いのか。将来が不安だ。
「大変だなぁ、お前」
頭を撫でてやると、「謝謝」と嬉しそうにお辞儀した。
ランボより素直で可愛い。
「で?やっぱりうちに住むのか?」
ツナに訊く。ツナはやれやれと肩を竦めた。
「分かってたけど、母さんがね……」
「いいんじゃねぇの?ランボより可愛いから」
「銀!?」
俺の発言にツナは目を丸くした。
だって可愛いし。ランボなら帰る所があるんだろうから追い出しても平気だろう。
「……えぇー」
ツナがぽかんと開けた口から辛うじて声を洩らす。
「だが一つ、解せない事がある」
ツナとイーピンが一緒に首を傾げた。
なにこれ可愛い。
「何故俺はカリフラワーなのにツナは人間に間違われたんだ……」
「果てしなくどうでも良かったー!!」
という訳でうちに住む事になったイーピンだが、問題はあの馬鹿牛である。イーピンにちょっかい出さなけりゃいいが。
ツナ、リボーンと三人、様子を見守る。
「やーいちょんまげ頭ー!!」
ごんっ
「……ぐすっ、お前のせーで銀時に怒られたぁぁぁ!!」
さっきからこの繰り返し。
ランボがイーピンをからかい、俺が粛正し、ランボが泣き喚く。
ランボも良く懲りないものだ。いい加減学習しないと一生頭にアイスクリーム乗っけたまま過ごす事になるぞ。
「銀……程々にしてあげなよ」
呆れたようにツナが言う。
「同年代と仲良くするのは大切な事だぞ」
「そうだけど……流石にランボが憐れだよ」
「そうか」
ツナが言うなら。
俺はしゃがんで、未だ泣き続けるランボの上になるべく優しく手を置いた。
ランボがゆっくりと俺を見上げる。
「ランボ」
「……?」
「俺だって、お前が意地悪しなきゃお前を怒ったりしねーよ。イーピンがお前に何かしたか?」
「……ううん」
「だろ?お前がやってんのは、ただの我が侭だ。
相手に悪意が無いなら、お前もそれなりの態度を見せろ。きっと相手もそれを分かってくれるよ」
首を傾げるランボに笑い掛ける。
「仲良くしろ、って事だよ」
もさもさの頭を一撫でして立ち上がる。
「す……凄いな、銀」
「…………よくそんな言葉がすらすらと出て来るな」
ツナとリボーンの声に曖昧に笑って応えると、部屋に戻った。実は適当に引用したものを継ぎ接ぎにしただけである。
後からツナに聞いたことだが、ランボのからかい癖は少なくなったらしい。
俺の前でだけ、だが。
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