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「あぁ……何でこんな事に」
「ツナよ、こんな言葉を知っているか。『人生とはかくも辛いものなのか、いやそんな筈はない、パフェさえ食えれば幸せである』」
「…………今つくった?」
「おう」
二人で皿洗いをする途中の会話。ツナが洗う係で俺が濯ぐ係だ。双子だから流石に息が合う。
「それより本当にごめん……山本まで巻き込んで」
「いーって!どーせウチの手伝いだからさ」
山本がやわりと笑う。こいつの笑顔は本当に他人を安心させる力がある。
ツナが釣られて笑顔を見せた所で、声がした。
「お前にばっか良い恰好させねーぜ!十代目、俺も手伝います!」
「獄寺君!!」
どこから嗅ぎ付けたのか、獄寺が山本を睨み付けながら現れた。
「リボーンさんから聞きましたよ、山本ん家のアコギな商売に騙されたって」
「ち、違うって」
「人聞きのわりーこと言うんじゃねー!」
山本が苦笑いする。
その様子を鼻で飛ばしてから、獄寺はツナへずいと近寄ると、にっこりと笑った。
「とにかく十代目、皿洗いは俺がやります!」
若干強引にツナからスポンジを奪い取ると、獄寺は手を流しに突っ込んだ。
――ガシャン、と陶器の割れる音。
そして血の気の引く音。
「は、はははちょっと手が滑りました」
苦笑いしつつも再び手を勢い良く突っ込む獄寺(バカ)。案の定皿が粉々に砕け散った。
「あれっ」
「何やってんのー!?」
坊っちゃんらしく家事ができないのか、単に不器用なのか。何にせよ獄寺は使い物にならないらしい。
ははははははっ馬鹿め!!益々ツナへの印象悪くしてやんの――
「………」
「あれ、銀?」
「ん?どーしたんだ?」
「…………それ、その手に持ってるやつって、」
「獄寺がやった」
ありがとう獄寺。来てくれて。
「獄寺が」壊した皿は三万らしい。
「ま、全く獄寺はしょうがないなー!!邪魔だからそこで見てなさいっ」
「んだと銀時!!」
「獄寺君っ、俺からもお願い!じっとしてて!」
「そ……そうですか」
ツナに言われ、しょぼんと項垂れる獄寺に罪悪感が生まれる事も無く、そこからは黙々と皿洗いが続いた。何事も無ければ平和なものである。
「こっちはあと少しで終わるよ」
一仕事終えた、というツナの声に機敏に反応したわんころが、鳴き声を上げた。
「ファイトッス、十代目!」
もっちゃもっちゃ。
嫌な予感。
――ぐぴゃぴゃ!これはランボさんのだもんね!!
――あ、ざっけんなテメェトロは俺んだ!!
「…………」
「……銀、」
「おう。せーのっ」
ツナと俺で同時に振り向き、違和感の正体を突き止めた。暇になった獄寺とランボで寿司を食い散らかしていたのだ。
ツナの瞳が、キラーンと光った。
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