日常編 | ナノ
1

「きゃっほぉぉぉ!!!」

寿司だぁぁぁ!
雄叫びを上げる俺をツナは慌てて呼び止めた。

「ちょ、銀!他のお客さんに迷惑だよ!」

「きゃっほぉぉぉ!!!寿司だもんねぇぇぇ!!!」

「ランボも真似するな!!」

ランボに拳骨を落とす。ツナははぁ、とため息を吐いた。

リボーンが「最近のツナは頑張っている」ということで寿司屋に連れてきてくれた。あのスパルタにしては気が利くよな。
という訳で俺は高級な寿司を食べ続ける。

「……なぁ、お前ら、こんな高級なネタばっか食って大丈夫なのか?」

不意にツナがリボーンに訊いた。平民育ちだから高額なものに萎縮する気持ちは良く分かる。但し俺は遠慮しないが。
リボーンは普段と変わらぬ表情のまま訊き返した。

「何がだ?」

「何がって高いんじゃ「ごちそうさま!」

ビアンキがツナのセリフを遮り立ち上がった。そのままリボーンの投げた紐をひっつかむと風のように、逃げた。

「……………」

「……じゃ、ツナ、ファイト」

襟足を掴まれた。






「どどどどどうすんの銀んんん」

「落ち着けツナ」

カウンターの中にはこっちを疑わし気な目で見てくる親父がいる。怖い。鋭い剣先突き付けられてる気分だ。

「こういう時は落ち着いてタイムマッスィーンを探そう。過去に戻って全てやり直そう」

「お前が落ち着けー!!」

カウンターの下に頭を突っ込もうとした所をツナに蹴られる。
渋々頭を引っこ抜くと、神妙な面持ちで人差し指を立てた。

「いいかツナ、これはリボーンの仕掛けた事だぞ?お前をマフィアのボスにしようとしてる奴がお前をちゃちい犯罪者に仕立てようなんざ思わねぇ。何か打開策がある筈だ」

「打開策……?」


その通り。俺も疑心暗鬼だったが……。
タイミング良く聞こえた声が吉兆の予感を助長させた。

「親父ただいまー……どうしたんだよ親父?」

「食い逃げだよ」

「食い逃げ……ってツナ達じゃねぇか」

絶望に項垂れていたツナが顔を上げる。

「山本ぉ!!」

絶望が希望になった。





「そーか、武のマブダチか〜。だったら話は変わらぁな。さっきの分はおっちゃんが奢ってやるよ」

先程と一転、人の良い笑みを浮かべる親父。目元とかが山本にそっくりだ。

「本当ですか!?」

「おう、武が世話になってるみてーだからな」

山本家は皆人が良いのだろうか。山本も、不快に思う様子は無く親に礼まで言っている。山本は悪くないのに。

「ありがとうございます!!」

ツナのセリフに合わせ俺は会釈。

「ただしだ、」

しかし親父はいきなり渋い顔になると、カウンター席を指差した。

「あの分は払ってくれよ」

なんとまあ良く腹にそこまでの空きがあるもんだ。元凶達を眺めながらため息一つ。
絶望へ逆戻りである。

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