日常編 | ナノ
4

恭弥に女子制服を頼み(言った瞬間瞳孔が開いて怖かった)、嫌がるツナを保健室で一旦診て貰い、異常無しという事で帰らせ、校医に女装を見せる事になっているので着替える。

「裸見せんじゃねーよ、特に胸」

「そのまま萎えちまえ」

良かった、男に目覚めてはいないようだ。
女子の制服は中々面倒臭い。そして短い。見えそうな為、トランクスを中に折り込む。前回と同じだ。

慣れない手つきで悪戦苦闘していると、様子を眺めていた校医が突然、意味を為さない声を上げた。

「あー、」

「あ?何だよ」

「本当、なーんで男なんだ。女だったらチューしてあげたのに」

「死ね」

そういえばツナは、初めて会った時に胸を触られたらしい。ツナに対しても女だったらと思っていたりするのだろうか。
俺達双子、特にツナは母親の血を強く受け継いでいるため、どちらかといえば女顔だ。それに中一であるから幼い。あるいは女と間違えることもあるかもしれない。

掌で目を覆う校医にムカつきながら、着替えを終える。

「どうよ」

目の前の変態に見せつけるようにくるりとターンすると、奴は途端にテンションが上がった。

「ヒュー!!やっぱりこっちのがいいじゃねぇか!」

やっぱりキモい。
思わずジト目を向けると、校医はニヤリと笑った。

「ほら、ここ座れ」

「は?」

「いいから」

腕を取られたので訝しみつつも座ると、その腕にチクリと何かが刺さった、ような。一瞬だったので何だったのか知らんが、虫にでも刺されたんだろう。
依然、校医は腕を放さない。

「俺は男はどうしても見たくないが、まあ、仕事なら。大切な仕事なら似合う女装まで許容範囲だ」

「……何だよ?おい」

「ほい、終了。もう帰れ」

「は!?」

自分に言い聞かせるようにぶつぶつと唱えた後、あっさりと手放した。着替えたばかりなのに、どういうことだ。しかしいつまでも女装していたい訳でもない。直ぐに着替えると保健室を後にした。


腑に落ちない。応接室に向かいながら悶々と考えた。
気持ち悪かったのかちくしょー。じゃあ前回の食い付きっぷりはなんだったんだこのやろー。ツナに見せないで良かった。
ツナといえば、ちゃんと無事に家に着いただろうか。途中でぶっ倒れてませんように。
そういえば山本、棒倒しでツナの下敷きになったよな。大丈夫とか言ってたが、怪我してないよな。
それもこれも獄寺と了平先輩の中の悪さが――

「銀時、どうしたの?入りなよ」

っと、考え込みすぎた。
応接室の扉の前で立っていたらしい。恭弥が開けてくれなきゃずっとそのままだったな。
応接室には、制服を受け取りに来たと思われる風紀委員の姿があった。これだけの為に駆り出されたのか……すんません。

「何をそんなに考えていたの?」

「校……じゃねーな」

途中から趣旨がずれた。

「ふーん……まぁいいや、入りなよ。制服持ってきたんでしょ」

「そうそう。そうだった」

女子制服を差し出すと、当たり前のように風紀委員が持っていく。恭弥は扉が閉まるのを確認して、俺と目を合わせた。

「またあの校医?」

そうだと言えば、あいつはクビになるのだろうか。

「いや、違う違う。体育祭後のクラス盛り上げるのに使ったの」

「そう」

「つか、マジ参加したの見てびびった。いつもは何があっても行かない癖に」

リボーンには会えましたか?

聞くが、思い通りにはいかなかったのだろう、恭弥は結局何も答えなかった。

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