日常編 | ナノ
3

「何で恭弥が相手の総大将なんだぁぁぁ!!つか原作では組どころか学年さえシークレットだったよな!?何平然と学校行事に参加してんだよ!!」

「向こうの総大将とあいまみえれば、赤ん坊に会えるかもしれないからね。一応原作でも参加してるよ、同じ理由で。
――ねぇ、下の君。倒さないでね」

「は、はいぃ!!」

恭弥の、そこまで怖くない声にもビビりまくる下の奴が哀れだ。
赤ん坊って、リボーンの事か?そういや前攻撃防がれてたっけ。

恭弥は、昨日の不機嫌が嘘のように楽しそうに(表情の変化はないが)俺を見下ろしている。

「銀時も出るなら言ってくれればチームを変えたのに。精神が脆弱になれば銀時が弱くなるかもしれないし、あんな草食動物の所より僕の傍にいた方がマシだよ」

一体どんな心境の変化があったんだろう。
というか恭弥の中での俺ってどんな奴なの。

さらりと言ってのけたが、聞きようによっては、ってか確実にツナを貶すセリフだ。隣のツナも暫く呆然としてから、慌てて棒の上によじ登っている。

明るい恭弥、顔面蒼白のツナという見事に対照的な大将二人の元、棒倒しは始まった。




「……」

状況はA組の劣勢である。
だって、人数違うしあっちの大将恭弥だし。
だから俺ももみくちゃになってて可笑しくない、のだが。

恭弥が「銀時、鍛えたいんでしょ?とりあえず片っ端から倒してみたら?」的な事をぼそっと漏らした所為で、俺の周りだけ穴が空いている。あれは恭弥が強くなった俺と戦いたいと言っている癖に全く俺を強くさせようとしないから言っただけだ。別に俺は鍛えたくない。しかし、どうやら恭弥並みに強いと思われたらしい。
半径八十五センチですか。それ以上ですか。回っても手の届かない距離ですか。

ダブルラリアットなんてするつもりはこれっぽっちもない。
折角参加したのにこれじゃあいたたまれない。というか目立ってて恥ずかしい。ラリアットなんかかまさないから、こっち来なさいよ。
こんなにぐだぐだと無駄なことを考える時間がある競技ってなんなの。
ドーナツ〜、と呟いてみた。虚しかった。

しかし、これは使えるんじゃなかろうか。今にも振り落とされそうなツナの元へ行けば、敵は俺から逃げていく筈だ。
俺はツナの元へ走り出した。案の定敵共も、何故か味方も捌けていくため目の前に障害は無い。
途中、山本に声を掛けられた。

「参加してくれたのなー!」

「おうよ!楽しそうだったからな!」

心底嬉しそうに言う山本が眩しいぜ。
目線をずらすと、今にもダイナマイトを出しそうな獄寺が、了平先輩と共闘中。珍しい組み合わせだ。
さて、肝心のツナだが、今にも倒されそうな棒にしがみついている。つか……落ちてね?
俺はツナの元へ向かおうとして――その必要が無い事に気が付いた。


「空中復活!!死ぬ気で棒倒しに勝ぁぁつ!!」


リボーンのドーピングにより超人化したツナは、下にいた男子共を踏み台に駆ける。
目指すは敵方総大将――恭弥だ。

「そうか、総大将は地面に付きさえしなければいいんだ!」

いいのかそれは、もう棒倒しじゃねーじゃんか。ただの緩いルール有りの戦じゃねーか。

ぼけっとツナを見ていると、背後から声を掛けられた。

「銀時、殺る気がないんなら危ないからこっちに来なよ」

棒の上で恭弥が手招きしている。他より高所で悠然と構える様はまさしく支配者。この競技が似合いすぎている。

「恭弥ぁ、ツナがそっちに向かってるんだが」

「僕がいればあんなの脅威にならないよ」

「わー凄い自信。でも、あんなに」

強そうなのに、と振り向くと、騎馬が一つ。
何なの、この競技。なんだっけ、騎馬戦?雲雀倒し?ルール無用?

ほら早く、と恭弥が急かす為急いで向かう。敵味方とかいう括りは恭弥の前では生ゴミ程の価値さえ無いらしい。
俺が近寄ると下の人が更に怯えるのが、申し訳ない。でも俺のせいじゃないんだ。文句は全て恭弥に言ってくれ。
……無理か。

「銀時、見てごらん」

不意に恭弥が言った。ツナ達の事だろうか。
恭弥の目線を辿る。

「なんて愚かなんだろうね」

何があったのか。
獄寺と了平先輩がツナを乗せたまま喧嘩していた。
山本一人でツナを支えられる筈も無く、重戦車とも謂わしめた騎馬は呆気ない最後を迎えた。

「こっちに来た意味無くね?」

恭弥を見上げると、淡々とした声が返ってきた。

「あっちにいたらいたで意味無いよね?」

まぁ……な。

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