日常編 | ナノ
2

「あーあー、どうすんだこんなに置物つくりやがって……。気絶した人間がどんだけ重いと思ってんだよ」

流石に呆れ果てソファに座り直すと恭弥は何故か俺を睨んできた。
どうやら俺が山本を庇ったのがお気に召さなかったらしい。自分自身が群れるのを嫌うどころか自分の周りの人間が群れるのも嫌なのか。その鬱憤は俺でなく風紀の野郎共に当ててやればいいのに。

「そんなに群れるのが嫌いなら俺もいなくなった方がいいんかねぇ」

「銀時を追い出す訳ないでしょ。まだまともに殺り合ってないのに」

この数年間一度も俺に攻撃を仕掛けなかった癖に。それどころか俺に絡んでくる奴片っ端から片付けてったのは恭弥の癖に。これでどう強くなれと。

「だってまだ長時間外に出れないでしょ?体力無いし」

……そうですか。


ぐだぐだとそんなやり取りをしていると唸り声が聞こえた。

意識を取り戻したツナが頬を押さえながら起き上がる。
現状を把握していないのだろう、辺りを見回して倒れた二人を見つけたかと思うと声を張り上げた。

「ごっ獄寺君!?山本!!」

「起きないよ。二人にはそういう攻撃をしたからね。
ゆっくりしていきなよ、救急車は呼んであげるから」

態々言わなくても良い事をさらっと言う恭弥をジト目で見てやった。
殴られた。

本気で痛くて悶えているとツナが俺の名を呼ぶ。

「よー……ツナ」

「………………
銀時は黙ってなよ」

恭弥が不機嫌に俺の顔をソファに押し付け、俺でなくツナが引き吊った声を出した。一見すれば俺が虐められてるように見えるからツナに恐怖が植え付けられるのも仕方ない。きっと顔は真っ青で今にも倒れそうな位震えてるんだろう。

苦しくて顔をもごもごと動かしていると、なんともまあ都合良く――銃声が響いた。

このご時世に学校で銃声なんて、スターターか強盗かリボーン以外ないだろう。
直後ツナの嘶きが聞こえてぼんやりと思った。

つか、息、出来ないんですけど……。

「うおぉぉぉぉ!!!」

限界が来るギリギリで漸く恭弥が手を離したので顔を上げると、ツナの拳を易々と避ける恭弥が視界に映った。

恭弥が隙を突きキツい一撃を浴びせるとツナは頭から倒れていった。

途端に興味が失せたのかツナから視線を外す。

「さて、後の二人も救急車に乗せて貰える位ぐちゃぐちゃにしないとね」

仮にも実の弟と、その友達なんですよ恭弥さん。
本当、リボーンのばかやろー。

しかし再び立ち上がったツナが不意打ちで恭弥の頬を殴った。衝撃で怯んだ恭弥の頭を更にスリッパ(ん?レオン?)で強く打ち付ける。

…死ぬ気なのは良いがもっと思慮深くなりなさい。

「……ねぇ、殺していい?」

顔に皺を深く刻み、更に怒気が増す。まるで全身から殺気を出しているようだ。

恭弥は酷く機嫌を損ねていた。
ツナなんてきっと、簡単にやられてしまうだろう。

「恭弥、殺し、ダメ、絶対」

「なら咬み殺す」

「おんなじじゃねぇかァァァァ!!」

早く出てこい元凶ォォォ!

「そこまでだ」

心の叫びが音になる前に、俺よりもだいぶ幼い声が響く。

「やっぱつえーな、お前」

ツナが死ぬ気になった時点でわかっていた事だが、多分元凶であるリボーンは突然姿を現した。
水を差された事であからさまにムッとした表情になると、恭弥はリボーンを睨み付けた。

「君が何者かは知らないけど、僕は今苛ついているんだ――横になって待っててくれる?」

言うと同時にリボーンへと殴り掛かる。

しかしリボーンは軽々と十手で防ぐ。俺の中で恭弥はトップクラスの強さを誇っていたので、これには俺も驚いた。この二人どっちが強いのか。
恭弥は逆に楽しそうに笑った。

「ワオ……素晴らしいね、君」

リボーンは恭弥から距離を取ると、小さい機械を取り出した。

「おひらきだぞ」

リボーンがそれを持ち上げたかと思うと、部屋中に爆音が轟く。

目をぎゅっと瞑っていると腰を掴まれたようで、訳も分からないままに引っ張られていった。

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