日常編 | ナノ
2

一瞬。
俺の体があったのは「ここ」じゃない所。


木造の古い家屋が建ち並んだ道の真ん中に人が沢山いる。着飾った娘、がっしりとした体つきの男、小さい子供……。

中心の何かに向かって罵声を浴びせていた。

人々の中心にいたのは――身体中をぼろぼろにされていたのは、俺とそっくりな白色だった。




――気持ち悪い


――不吉


――鬼の子



殺せ、殺せ、殺せ、殺せ!


呪詛のように流れ続ける声。

顔を上げると、刀を振り上げる男がいて、それから――――


それから――――




「みんな、俺が殺した」












荒い息を繰り返し、足元を眺める。
思ったより冷静なのはさっきの映像の所為だろうか。

「あぁ――」

外でこんなにも肌を露出したのは「久しぶり」だ。
傘だった為か男達は「あの時」のように死ななかったけれど、確かに俺がやったのだ。

粉々に割れたサングラスを拾い上げると、ここに近づく足音が聞こえた。

「これ、キミがやったの?」

振り向くと、さっきとは違う男が一人。
これを見ても冷静な口調。

警戒しつつ頷けば、男はへぇ、と短く声を発した。

「キミが…ねぇ。
まあ、群れてるそいつらには興味無いからいいけどさ」

そいつは変な形の武器を構えた。

「学校に不法侵入なんて、いい度胸じゃないか」

咬み殺す。
奴は言い終える前に俺に向かって走り出した。

降り下ろされたそれを間一髪で避ける。
白い糸が数本、宙に舞った。

「ワオ!良く避けられたね」

「何すんだいきなりっ」

あくまで冷静な男に怒鳴る。間近でにやりと不気味に歪む顔に悪寒が走る。
いっそ狂気と呼んでいい程のそれは、誰かに、似ている気がした。

再び落とされた武器に今度は避けず飛び込んだ。
武器の側面にてのひらを当てて受け流しながら懐に潜り込む。襲いかかるもう片方は無理矢理掴み捻った。ぴりっとした痛みがてのひらに走る。しかし行動を止めるには至らない。
男は僅かに目を見開くと手を放した。また捕まれないように即座に武器を引き寄せると、奪い取った武器を刀の様に構える。

男は肩を竦めると武器を降ろした。

「……まさか、僕と互角に闘えるなんてね」

うるさい。
何だかふらふらしてきた。

再び武器を構え直した奴を見据えた。


息が荒くなる。汗が、噴き出す。



一歩足を踏み込んだ所で、心臓がどくんと、一際大きく高鳴った。


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