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「……あれ、大将さん死ぬ気弾撃たれてね?」
今気付いたが、良く見ると主将の額に炎が点いている気がする。そしてツナの額にも。
リボーンは一体どこにいるんだ?やはり殺し屋らしく気配を消すのが上手いのか。
山本はマフィアについて未だに理解してないし京子には言っていないから、話が理解できるのは獄寺しかいない為、彼に聞こうと獄寺の傍までそっと近寄った。
「獄寺、獄寺」
「よしっ、そこだ!ナイスです十代目――何だよ、銀時」
「リボーンどこにいんのか分かるか?」
「リボーンさん?そういえばお姿が見えないが……十代目の戦いだ、どこかで眺められているに違いねぇ」
そういうものなのか。
「『極限ストレート』をかわすとは!ますます気に入ったぞ!なおのことボクシング部に入れ沢田!!」
「絶対断る!!」
リングではまだ、熱い戦いが繰り広げられていた。こっちにまで熱気が伝わってきて迷惑だ。
こちとら箱入り息子なんだよ、熱いのは苦手だ。
うん……。
「獄寺ぁ」
「あ?」
「外、行ってくる」
何やら文句を言われたが、暑いモンは仕方がない。
ガラスが割れる音を背に扉へ向かう。なんだろう、何があったんだ。気になるもののしかし暑さには勝てない程度のものである。
俺はボクシング部を出て深呼吸した。
風が気持ち良い。
固まった体を伸ばした所で携帯が震えだした。
開くとディスプレイには雲雀恭弥の文字。
「もしもーし」
『銀時、今どこにいる?』
「んー?ボクシング部前?」
『……丁度良かった。近くにいる風紀委員捕まえてボクシング部に行ってくれる?ガラスが割れたようだから』
成る程、ガラスの割れるような音だと思ったら正しくそうだった訳か。誰かが風紀に報告したのだろう。
「了解、今行くな」
『助かるよ』
電源ボタンを押して通話を終える。
恭弥は風紀委員長であり実質並盛の支配者なので忙しい。本人はいつも余裕ぶってはいるが、正直全てを一人で処理するのは大変なのだ。
だから恭弥は俺に代役を頼んだのだろう。最近学校に来ると時々頼まれる事があるから、もう驚かないようになった。
……本来こういった仕事は学校の用務員がやるべきなのだろうが、最近では生徒の中で「困った時は風紀委員へ」と無意識の了解があるらしく、本来こなすべきでない案件まで舞い込んでくる。普段は怖がられているがやはり頼りにもされているのだろう。これも恭弥の権力が保たれる理由の一つだ。
ただ学校は仕事しろよと言いたくなるが。
きょろきょろと見回しリーゼントを見つけるとそれに駆け寄る。
相手は俺の顔を見るなりピシリと固まり、瞬時に背を伸ばした。
「何でしょうか沢田さん!」
「いや、沢田でよろしく。なんかやだ」
「いえ……委員長が怖いんですよ」
しかしリーゼント君は先程より砕けた態度になった。
恭弥の恐怖政治で、一緒にいる俺にまで敬語を使うようになった風紀委員。ガタイのでかい奴に畏まられると堅苦しいし、風紀を従える沢田銀時怖いなんて言われそうな為、風紀委員の奴等には止めろと言ってきた。外でやられると一般生徒の目が痛い。
結局、敬語は無くならなかったが俺への態度を柔らかいものに変える事に成功した為、うまくいったと言っていいだろう。
「ボクシング部のガラスが割れたから行けって、恭弥が」
「わかりました。では、自分は業者に連絡してから行くので先に向かって下さい」
「じゃ、誰かに伝えとくな」
風紀は、気性はともかく基本的に真面目で優秀な人間の集まりだ。直ぐに手配を終えるだろうから、急いだ方が良いだろう。
ひらひらと手を振ってから、俺はもと来た道を戻った。
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