日常編 | ナノ
1

もうお決まりの展開だが、今日も例に漏れず二人揃って寝坊した。
流石に間に合わない時間だから俺もツナも諦め半分だが。

「こりゃーどう急いでも遅刻だな」

「いつもの事さ。俺達人間はいい加減自然の摂理から逸脱した行為を止めるべきだな。
人間は三大欲求が満たされなければ死ぬんだから」

「三大欲求?」

「睡眠食事性欲。生きる上で最も重要なもんだ、だから勉強なんざ本当はいらねぇんだよ」

「へ〜」

そんな所々適当すぎる豆知識も交えつつ暢気に歩いていたが、それはこれまたお決まりと化した奴の行動により終止符が打たれる。

「やってみなきゃ分かんねーだろ」

そう言ってリボーンはツナへ銃を向ける。

「げ、おまえ、ちょっタンマ、」

「……ばーん」

焦るツナの脇で俺は呟いた。





「死ぬ気で登校するー!!」

と叫んで、俺の手を掴み走るツナ。脱臼しそう。
鞄は紐が引きちぎれそうな位に負荷がかかってるし、差していた日傘は既にひっくり返っている。両手が使えない為抵抗もできないのだからと諦めて、なるべく負荷の掛からないように注意しつつ身を任せた。

ツナは走る。途中何かがツナの腕にまとわりついたが気付いていない様子だった。
ツナのってか俺の腕取れるんじゃね?俺別に遅刻してもいいから放してくれれば嬉しいんだが。

目的地である学校に着いたところで漸くツナは止まり俺の腕を放した。
もうこの傘使えないな。鞄は……げ、紐が千切れてる。買い替えるしかないな。
持ち物を点検する俺の横で、ツナの額に燃えていた炎は力の抜けたように消えていった。

「リボーンの奴……間に合いはしたけどまた恥かいたよ……」

「ツナ。腕、腕」

「え?――わぁあぁぁ!?」

漸く人を巻き込んでいた事に気付いて慌てるツナ。気付かないものなのか、人が自分の腕にぶら下がっても。

「だっ大丈夫ですか!?」

手を離したその男。短く刈り上げた髪に筋肉質な体つきから察するに何かのスポーツをやっているのか。
そいつはむくりと起き上がり、叫んだ。

「聞きしに勝るパワー・スタミナ!そして熱さ!!やはりお前は百年に一人の逸材だ!!」

「……は?」

呆けるツナを差し置いて過熱する男を静観しつつ、俺はリボーンを呪った。














所変わってボクシング部。
まだ心の準備ができていないのか、扉の前で立ち往生するツナ。しかし不意に扉が開いた。

「おぉ、沢田!待ってたぞ!!」

ボクシング部の主将からの歓迎を受け、神妙な面持ちで中へ入る。半歩後ろから俺は静かに付いていった。

タイからムエタイの長老って人も来てる。
友達、そしてツナのマドンナである京子も見ている。

「ゆくぞ沢田ツナ!手加減などせんからな!!」


さぁ、ツナ、修行の成果の見せどころだぜ!


「って、えーー!!何でバトル漫画風になってんの!?修行って!というかパオパオ老師に疑問を持とう!!」

「バレたか。流石ツッコミ四天王に見初められしツッコミ勇者のハリセンを作った機械を作った工場長の息子の親友の転校先のクラスメイトの眼鏡に似てる男だ……侮れん」

「ツッコミ関係ねぇ!つか眼鏡に似てるって何!?」

「あれ?お前眼鏡掛けてねぇな。ツッコミなのに」

「何その偏見!!」

笹川兄が待ちくたびれてんじゃねぇか。説明しとくから試合始めとけ。


今のはまぁ軽い前座というか。

何故かボクシング部に勧誘されたツナは断る為にボクシング部で主将と対決する事に、だがツナの思い人であり主将の妹である京子が来て、無様晒せねぇわ死ぬ気で主将はボコれねぇわ八方塞がりである。

以上。

いつも思うが、負けたら入部……自分より弱い人材ならいらなくね?
逆に強い方が欲しさが増すような……まぁいいか。

それにしても京子の兄貴すげぇな。あんな凄そうな人と知り合いなんて。

またとないチャンスなので、俺はパオパオ老師にサインを貰っておいた。

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