日常編 | ナノ
2

いきなり英語で言われて困惑していた少年だが、詳細を説明すると快く(若干びびってはいたが)承諾してくれた。
その際「疑問文の時はYou canではなくてCan youですよ」と言われたのは恥ずかしかった。
某通信講座はユーキャンでオーケーじゃんと言ったら可哀想な顔をされた。更に赤面した。


「本当にすみません……僕がぶつかったから記憶が飛んでしまったなんて」

「いやぁ、いーんだよ。あんな衝撃で飛ぶ記憶なんて記憶じゃねぇし。
教えてくれんなら寧ろ礼を言いたいくれーだ」

近くの公園で小学生に勉強を教わる中学生とは、世間にどう映るのか。しかし俺は気にしない。

少年はなんとまぁ良くできた子だった。俺より勉強できるんじゃね?
教え方も順序だてて、俺が解るものから関連付けてくれる。たまに混じる小ネタが面白くて、すんなり頭に入った。どうやら本当に小学校で英語が教えられているらしい。
恭弥の教え方が悪かった訳では無いが。あれは恐怖が勝るからできれば遠慮したいものだ。

「テスト範囲はこれで終わりですか?」

「おぉ!こんなに簡単に覚えられるとは、俺って実は天才?」

「……」

「いや、冗談だから。本気にしないで」

サンキューな、と笑うと少年も返してくれた。どうやらヤーさんのレッテルは剥がれたらしい。

うん、何とも素直な好少年だ。好少年なんて言葉あるのかは知らないが将来は良い大人になるだろう。

何かお礼しようかと思ったがポケットには大したものが入っていなかった。
小学生だし――いいか。

「ホレ」

少年の掌を広げさせてコロンと落としたのはイチゴ味の飴。これは子供扱いになるのかと不安に思い少年の顔を覗き込むが、不快に思っている様子は無かった。

「わぁ、ありがとうございます」

「悪ぃな、そんなのしか無くて」

「いえ、飴好きですよ。
……嫌な記憶を思い出しはしますが。今日限定で」


「嫌な記憶?……そういや、さっきはどうして走ってたんだよ?奇声まで上げて」

「いいいいや!気にしないで下さい大した事無いんで!!」

両手と頭を激しく振る少年に、別にそこまで知りたくないしいいかとそれ以上の追求を止めた。

少年はとても疲れていたらしく、もう家に帰るとの事。
そうか、と公園出入口まで行ってあることに気付いた。

「そういや、名前聞いてねぇな」

「そういえば……。僕は入江正一です」

「正一君でいい?」

正一君が頷いたのを見て、俺は名乗った。

「沢田銀時。銀さんでも銀ちゃんとでも、好きに呼んでくれや」

「じゃあ銀さんで。……あれ、沢田?」

「あ、じゃあ俺こっちだから」

そう言って正一君が走ってきた方向を指すと、何故か青ざめられた。






**



家に帰ればいつも通り、居候含め全員がいた。ビアンキは毒物を作りだしてるしツナはリボーンに勉強を教わっている(?)し母さんはのほほん族だし。
そういえば英語の事がリボーンにバレないで良かった。見つかっていたら何をさせられたことか。

ふと俺の定位置を見るとランボがいた。邪魔なので放り投げると何かが俺の頭上に落ちてくる。
拾うとそれは紫の塊、ランボの好物のぶどう飴だった。

何故か正一君の青い顔が浮かんできて、思わず笑うとランボへそれを放ってやった。

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