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校庭へ戻ると試合は終わったらしい、全員が校舎へ向かっていた。
その波から一際でかい人影を見つけるとそいつに歩み寄った。
「山本!」
「銀時!大丈夫だったか?」
俺の姿を見止めて通常装備の笑顔が深まる山本。それに笑顔を返すと足を突き出した。
「おお、ただの捻挫だって。湿布してもらった」
言うと安心したようだ。良かったなと俺の肩をバシバシ叩いてくる。
「俺達は勝ったぞー!」
「マジか!」
ツナはどうしたんだろうか、あれっきり出なかったのか?
そういえばツナと獄寺が見当たらないが。特に獄寺はうるさいし、あんな奇妙な二人組が目に入らない訳がない。
山本に訊いて見ると、ツナの怪我で保健室に行ったらしい。ツナは一人で行こうとしたらしいが、獄寺がお姫様だっこをしかねない勢いで同伴を強請したらしい。
あのクソ保健医の所か……。
……あれ、でも鉢合わせしなかったが。
「もう教室に戻ったんじゃねーか?」
「それもそうか」
納得して教室に戻ったものの二人はどこにもいなかった。
**
気が付くと薄暗い場所に、綱吉と獄寺は静かに佇んでいた。
「ここは…………?」
「十代目!お怪我は?」
「獄寺君。大丈夫だよ」
笑みを返す綱吉にほっと肩を撫で下ろす獄寺。
「それにしても、ここは一体どこなんでしょうか?」
闇ばかりが広がっていて、互いの姿を確認するのが精一杯だった。頭から足元まで全てが同じで宙に静止しているような錯覚が起こる。気分の良いものではない。
ただ判るのは、
「誰か、来る――?」
綱吉の言葉に獄寺が弾けるように辺りを確認する。無意識に綱吉を背中へ回した。
―――― ……
さくり、
背中の綱吉の息を呑む音が聞こえる。
この人は、俺が、護らなければ。
己のボスを気にしつつ獄寺はダイナマイトを取り出し戦闘体制になった。
砂利を踏むような音は近づくが、依然として姿が無い。
――――き……
声が聞こえる。微かなのに恐ろしく響く声。
――貴方は―
――まだ、……が……
――私……を、
……………せ、ん
闇に輪郭が浮かびあがる寸前、二人の意識はふわりと光へ飛ばされた。
――――せんせい
**
「っ、!?」
二人同時に跳ね起きる。
反射的に周囲を見渡し、鮮やかな色彩に安堵の息を吐いた。
気が付けば保健室に向かう途中の廊下に倒れていたらしい。鳴り響くチャイムが授業の終了を告げていた。
「あはは…体育サボっちゃったね」
苦笑いを浮かべる綱吉に思案顔で獄寺は言った。
「あの声、どっかで聞いたような……」
「え?」
「あの、最後の『せんせい』でしたっけ?誰かの声に似てるんですよ。少し幼いようでしたが」
獄寺が唸る。釣られて綱吉も首を傾げた。
せんせい――――先生。
その言葉でリボーンを思い浮かべてしまった自分に悲壮感を覚えた。
……あいつはただのマフィアだっての。
「お、ツナ!獄寺!こんな所にいたのか」
思考に集中していたからか前方から来る人物に気付かなかった。
ハッとして二人、前を見ると銀時と山本の姿があった。腕にはそれぞれ教科書が抱えられている。
「次、理科室だぞー。遅れんなよ」
気だるそうに言う銀時に僅かな既視感を覚えたがそれは直ぐに消え去る。
礼を告げてから綱吉と獄寺は急いで教室に戻った。
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