日常編 | ナノ
1

山本に誘われ、暇だしいいかと晴れ渡る空の下野球部見学をしている。
もう見学というより仮入部かってー程振り回されてるんだがな。

せっかく持ってきた日傘も意味を成さず(日焼け止め塗ってて良かった)、俺が走る度、ボールを投げる度打つ度に先輩っぽい人達が目を輝かせて俺を褒め称える。ついでに入部届を渡される。
長時間運動できないと言っても聞き入れて貰えずもみくちゃになりながら山本に助けを求めた。

「大丈夫かー、銀時!」

元々はお前の所為だから、なんてその笑顔の前では言えなかった。


結局山本が付き添って早めに帰る事になった。
練習時間を削ってしまった事に少し罪悪感がある。元の原因でもある為、少しだが。

山本は俺が着替えるのを横目にちらりと見ると、あれ、と疑問符を浮かべた。

「それ、どうしたんだ?」

「ん?」

山本が肩をまじまじと観察する。

「ここ、傷痕」


ああ、それか。

左肩にある刀傷のような痕。いかにも斬られたような見掛けのこいつとは実は生まれた時からの付き合いだったりする。

それを話すと、山本は目を丸くした。

「へぇ、そんな事ってあるんだなー」

「医者も驚いたらしいからな。結局身体をつくる過程で傷がついたって事になった」

ツナにでもぶつかったんじゃね?あいつは生まれる前は強かったんだよきっと。

山本は面白そうに笑った。















俺は自分で言うのも何だがだいぶ適応力がある。リボーンが来た時も大して驚かなかったし。
だが気色悪いのは無理なので、この光景は堪えられるものではない。

「これは凄いな」

山本がさして驚いた風でない口調で言った。

目の前には一面の黒。
ペンキでは無い証拠に凹凸があり、僅かに動く気配がある。

カラスだ。カラスが道路に落ちている。
死んではいないようだが、この光景は心臓が弱い奴には毒だぞ。

それなのに山本は心臓が強いのかバカなのか暢気に、

「カラスってこんな風に寝るのなー」

間違ってるから。

「これじゃ通れないよな。どうする?別の道行くか?」

「いや、退かせば通れるって!」

俺の意見を一蹴するとカラスの大群へと向かう山本。足に付くギリギリまで近寄ると手を一定のリズムで叩き始めた。
するとどうだろう、カラスはよろよろと動き始め順に飛び立っていった。
こいつは鳥使いか。

殆どのカラスが飛び立つと山本はにっこりと振り返った。

どういうこっちゃ。



途中鳥使いと分かれ自宅へ向かう。
心なしかどんよりした空気に顔をしかめながら も無事に到着し、扉を開く。しかし玄関も空気が濁っているような気がする。気分が悪い。

「ツナ?」

部屋ではツナが悲壮感を背負い隅で体育座りしている。
声を掛けると泣きそうな顔をバッと上げた。

「銀――」

「銀は女好きだぞ」

失礼なリボーンの言葉にツナの体は再び沈むと今度は頭を抱え始めた。
俺は女好きな訳ではない。

「京子にはスゲー反応示してたじゃねーか」

「いや……あれはほら、同級生とは仲良くしなきゃいけないから」

「ほー」

「……」

何故、帰ってきていきなり女好きなんて不名誉な罵倒を浴びせられなきゃいけないんだ。

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