日常編 | ナノ
3

暫く呆然としていた獄寺は我に返ると急いでツナの元へ駆け寄った。
煙幕が薄くなると次第に二人の姿が確認できるようになった。

どうやら山本がツナを守ったらしい。

「試験合格だ。お前も正式にファミリーだぞ」

「サンキュー、小僧」

リボーンの言葉に山本が屈託の無い笑顔を見せた。


そんな山本の胸ぐらを獄寺はいきなり掴んだ。

いつもなら殴りかかるんだろう、しかし今回は違うようで。

「……、よくやった」

珍しい、笑顔でそう言った。

「十代目を守ったんだ、お前をファミリーと認めねー訳にはいかねぇ。
……だが十代目の右腕は俺だからな。お前は精々ケンコー骨だ」

ケンコーコツ。

けんこうこつ。

何故ここで肩甲骨が出てきたのかは謎だが山本は更に笑顔になり、獄寺と右腕争いをし始めた。

若い子は元気だねぇ。
あ、同い年じゃん。


それにしても、と俺はリボーンへと視線を戻す。今日もずっと無表情でいたこいつは直ぐに俺の視線に気付いた。

「何だ?銀」

「お前、もし本当に山本やツナが怪我したらどうすんだよ?」

「あいつらの能力を見極めて攻撃したから大丈夫だぞ。万一当たってもその時の処置は出来るようになってるしな」

いつもの読めない表情をつくったままのリボーンに俺は言ってやった。

「こういう世界にゃあ一般人が遊び半分で足を踏み入れちゃいけねぇんだろ?」

これは前にリボーン自身が言っていた言葉だ。例えどんなに腕っぷしが強くても、どんなに頭が良くても簡単に蹴落とされる世界。だから人を慎重に選んでいるのだと。
だが、いくら素質があり是非とも勧誘したいと思ったとしても、山本は何も知らないのだ。このまま引き帰せない所まで何も教えない気なのだろうか。
山本は野球少年で、はっきりと夢もある。勝手に将来を潰す可能性を作り出すのは暴慢だ。
それに。

「勘違いさせたまま、騙し騙しでここにいさせんなら、」

あいつ、死ぬんじゃないか。

リボーンはにやりと口の端を歪めた。

「後でしっかり理解らせるからな、問題ねぇ」


山本は部活に向かったらしい、既に姿を消していた。





**



銀時が先に校舎へ戻ってしまった為綱吉も帰ろうとしたが、戦闘の余韻に浸る獄寺に引き留められる。興奮した獄寺と相変わらず思考の全く読めないリボーンが座り込んでしまった為、綱吉も仕方なく腰を下ろした。

「仕方ねーですが、俺は認めましたよ十代目」

獄寺は笑顔で無事で何よりですと言う。

「ありがとう……」

綱吉は消耗しきった表情のまま項垂れた。
あれ程止めようと努力したのに結局山本はファミリーの仲間入りしてしまったのだ、当然といえば当然だろう。

綱吉の頭は友達を巻き込んでしまったという後悔でいっぱいである。

そんな綱吉を見かねた獄寺は全開の笑顔を向けた。

「心配無いですよ十代目!リボーンさんが選んだんです、そう簡単にくたばる訳ありませんって!」

「そ、そうだよね」

「それよりも銀時の野郎、十代目を置いて先に行きやがって……」

なんであんな奴入れたんです?
舌打ちをする獄寺にリボーンは答えた。

「銀は相当実力者だぞ。既にマフィアの強豪ともやり合えるくれーだ」

「銀の闘う所なんて見た事無いよ!?
第一、体だって弱い方なのに!」

最後の一行に、獄寺は横に激しく首を振った。
しかし、事実体は弱い。ほんの数年前まで外へもあまり出られなかったのだ。確かに最近は異常なスピードで身体が丈夫になっていたが、それでも激しい運動や喧嘩だってあまりできないのだと綱吉は思っている。……学校をサボったり時々フラフラとどこかへ行くことがあるが、そこで何か良からぬことをやっているのだろうか。

「ああ。……だが、それにも関わらず実戦における能力は今いるファミリーの中じゃ随一かもしんねーな」

それにこの世界の厳しさもしっかり理解している。一般人の中でファミリーに加えるに相応しい人間として、彼以上の人間はそういない。

そう腹の内で考えているとは言わなかったが。

「まさか!?」

「こりゃ、銀について調べる必要がありそうだな」

徹底的にやりそうなリボーンの様子に、綱吉は双子の片割れへと合掌した。

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