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「ごめん!早とちりでどうしようもない親で!後でちゃんと言っておくからっ!」
「何でツナ?俺は?」
「おめーは今まで学校サボってたじゃねーか」
成る程。ツナが必死に謝る隣でリボーンと暢気に会話する。
京子は煮え切らない曖昧な返事を返している。今は混乱しているから気づいていないが、冷静だったらツナにはショックだったろう
。ツナが彼氏と言われた時の反応が赤面でなく硬化なんて、脈がありませんと言われているような気分になる。
「そっそうだ!!何かして遊ばない?」
その場を取り繕うように言うツナの言葉を受けリボーンが取り出したのは銃だった。中はおもちゃらしい為なんら問題は無いが。
一番手を訊くリボーンに、楽しそうに手を挙げる京子。ウチのツナより勇気があるのではないだろうか。
京子は唸りながら額に銃を当てると意を決し引金を引いた。
乾いた銃声が響く。
京子の緊張していた顔は僅かな驚きに変わり、そのまま背中から崩れていった。
「死ぬ気弾を装填した」
「なにやってんだよ!!大変だ、京子ちゃん!」
「死ぬ前に後悔していることがあれば、死ぬ気で生き返るかもな」
「無責任な事言うな!!」
珍しくツナが怒っている。
俺もリボーンのこのやり方は頂けないと思うが。
しかしリボーンは飄々としている。何か策があるのだろう。
「あれを見てみろ」
案の定、自信満々に京子の方を指差した。
……下着姿の。
まずツナが盛大に鼻血を出し、つられて俺も少量だけ垂らした(断じてつられただけだ)。
京子は無言で立ち上がり部屋を出る。俺とツナは心配で追いかけていった(あくまで「心配で」だ)。
「あれで死ぬ気になってんのか?」
「京子は死ぬ気になると静かになるタイプだな」
タイプなんてあるのか。
死ぬ気の不思議について思うことはあるが、悠長に考える暇も無く、母さんの悲鳴が聞こえた。
ツナの死ぬ気モードであの有り様だ、京子の身体レベルがどの位かは知らないが兎に角やばいのではないだろうか。
慌てて台所に入ると、京子がテーブルを叩き割る姿が確認できた。
「勝手に決めつけられて頭にきてるんです」
「俺が『彼氏』だって思われるのがそんなに嫌だったなんて……」
京子の頭にきた発言にショックを受けるツナ。
更にリボーンにとどめを刺され灰と化している。脈どころか二人の間には深い谷が広がっていたらしい。
そうしている間にも京子は母さんを追いつめている。なんだかシュールな絵面だ。
俺はツナを一瞥し、溜め息。
「リボーン、何とかなんねーの?」
訊くとリボーンは工具用程の大きさのハンマーを出現させた。
「どこから出したよ?」
「リバース1t。1tある」
無視かオイ。
リボーンはそいつを床にめり込ませご丁寧にも重さを視覚からわからせてくれやがった。
知りたくなかった。
「まさか京子ちゃんを――おい、待て!」
ツナの静止を聞かず、リボーンは京子目掛け跳躍、その頭にハンマーを叩きつけた。
京子の頭から小さい何かが落ちる。
京子と母さんは二人して倒れていった。
「リバース1tには死ぬ気弾を無効化する力がある。俺にしか出来ない技だけどな。これで死ぬ気タイムを夢だと思う筈だ」
「そんなものがあるなら最初から使えよ!!」
同級生に下着姿を見られたなんて最悪な事、覚えてたくないもんな。
「いいじゃねぇか、ツナ。寧ろ好きな娘の下着見れてラッキーだと」
「な訳あるかッ!!」
まぁ、取り敢えずは一件落着したのだ。良しとしよう。
しかし、京子に死ぬ気弾を撃つ必要性が分からない。リボーンを真に理解できるまでは平穏に過ごす事など出来はしないだろうが、この分では一生理解できる気がしない。京子に制服を着せながらやれやれとため息を吐いた。
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