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今日も学校をサボ……公欠するつもりだったが、リボーンが何故か俺を、この俺を叩き起こして無理矢理家から追い出しやがった。
俺には一切関与しないと思っていただけに、赤ん坊が朝から威圧感たっぷりに朝の支度を促す様はインパクト大だった。
チキショー、覚えてろ。リボーンは忘れてるだろうがな!
しかし外に出てしまったのは仕方ない。渋々ツナと並んで登校することにした。
ツナは俺が真面目に学校へ向かうのが相当嬉しいらしくさっきからちらちら、こっちを見てにやけてくる。
弟としてツナをかわいがってはいるものの俺は男に見つめられて喜ぶ性癖など勿論持ち合わせていないため、ツナが俺に目を向けたのを見計らって見つめ返してやる。すると案の定ツナはびくっとして首を前に戻した。
単純な奴だ。
それにしても本当に俺達は似てない。
俺は平均身長(あんのかな?)なのにツナはもっと低い。髪も、癖があるのは同じだが質が違う。
――それに俺はアルビノとかいう病気らしい。昔は外へも中々出られなかったものの、何故か今では日差しに少し弱いだけで健康状態には殆ど影響はないらしいが、人に比べ色素だけは薄かった。まぁ髪は白というより銀色に近いが。
その為今も日傘を差している。短時間だがなるべく差すようにしていた。大して変わりはないだろうが日傘があるだけでなんとなく安心するのだ。
俺の名は、父さんが髪の色から付けたらしいが……なんだろう、いつもここまで考えると別の人間の顔がちらつくのだ。ふと、知らない筈の声が、銀時と呼んでいるような錯覚に陥る。
それこそもっと昔――。
「銀!」
ツナの声で我に返る。
「学校着いたよ。考え事でもしてたの?」
「あー……まあな」
それより中入るか。
適当にごまかして、ツナを急かした。
ツナは性格的には何の問題もない、寧ろ純粋に友達になるには最高だと思う。
だがツナの天災的(誤字ではない)なまでのダメダメさにばかり目が行ってしまい、即ちツナには今ろくに友達がいない状況である。
それはツナに限らず別の意味で俺にも言えた事だ。
普段から登校しないせいで、見た目も手伝い印象はだいぶ良くない。その上たまに学校に来ては大した勉強もしない。
完璧不良扱いだ。
まあ、あいつの国家レベルの権力と俺の並外れた知能のお陰で退学は免れているがな。……権力に関しては嘘ではない。本当に。
とにかく、友達のいない俺らは必然的に一緒にいることになる。
幸いクラスも一緒だし。
つまりツナをいつもからかう奴等は俺が怖くて近寄れないということ。
俺としては、だからたまには学校に行かないとな、とは思っている。面倒であまり行かないが。
しかし、今日はやけにこっちを見る奴が多くないか?珍しく俺がいるからってのもあるだろうが、どっちかというとツナを見ている。しかもいつもの嘲りや蔑みではない、なんというか、ちょっとした有名人を見るような――敵意の無い視線だ。
ツナを見ていてもいつものダメツナっぷりは健在だった、俺がいない間に何があったんだ。
ツナに訊くと、頬を掻きながら苦笑するばかりで何も言おうとはしなかった。
仕方ない、後で誰かに訊こう、めんどいし簡単にびびる奴から。
俺が諦めて自分の席――因みに窓側一番後ろ――に座ると、ツナは取り繕うように言いだした。
「そ、そういえば今日転校生が来るんだって!どんな人かなぁ。仲良くなれるといいけど」
「性格がどうであれムリじゃね?」
悪かったら無理確定だし、良い奴だったとしてもそれはそれで別の奴があっという間に仲良しグループに引き込むだろ。
そう言うと、ツナはがっくり肩を落とした。流石に可能性さえ摘み取るのは可哀想だと思ったので一応「試しに話し掛けてみろ、全てはそれからだ」と頭をポンポン叩いてやった。
と、そこでチャイムが鳴る。俺は既に座ったからいいとして、ツナは結構離れた席にいる。急いで席に戻ろうとしている姿を見ながら溜め息を吐いた。
ツッコミに対してボケが少ない気がする。俺的にボケが多すぎてツッコミが混乱する位で丁度いいのだが。勿論俺はボケ希望だ、楽だし。
ツッコミばかりであれば勿論つまらない世の中になるだろう。何故ならツッコミとは常識人がなるものだからだ。
……まぁ、いいか。
その後紹介された転校生の獄寺とかいう奴は、始終仏頂面をしているかと思えばツナの机を蹴飛ばしたり(ツナのひ弱オーラがそうさせるのだろうか)、中々典型的な不良だった。あれ?本物の不良なら学校自体来ないか?
だが奴は顔立ちが整っている所為かそれでも女子の黄色い声を浴びてやがった。同じ銀髪なのに。
獄寺は今も机に足を掛けてツナを睨み付けている。
やっぱり授業は受けるのか、真面目な。
にしても……何故ツナ?確かにツナはダメオーラだだ流しでいつもからかいの対象になっているが。どちらかというと不良に絡まれ易いのは俺だ。そのお陰か今では向かう所敵無し状態である。
可哀想に、ツナはまるで解体を控えた豚のようにびくびくしている、括弧笑い。
取り敢えず俺としては獄寺は抹殺対象となった。
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