銀魂で金持ちパロ
2015/04/05 18:06
「という訳で晋助、小太郎。よろしくお願いしますね!」
呆然とする子供を前に、松陽が笑顔を見せた。
「ちょ、ちょっと待って下さい!何をというか、何があったんですか?」
桂が慌てて遮った。何の説明もないまま「という訳で」と言われても反応しかねるのは尤もだ。高杉も言葉を失いながら桂の言葉に激しく頷いている。
松陽は笑顔のまま、しかし簡潔に事の顛末を話した。
「昨日、己の探求心を満たす為に刺激がいっぱいのとある路地へ入りました。
そこで――」
「ままま待って下さい。ツッコミたい事があるのですが」
再び桂が話に割り込んだ。幼いながらも重鎮のはしくれとして見過ごせない単語があったようななかったような。聞いているのかいないのか、松陽は無視して言葉を続けた。
「――そこで、普段見つけられなかったような入り組んだ場所を見つけたんです。勿論入りますよね。私は嬉々として奥を目指しました」
一度無視された桂は、隙を伺いツッコミを入れようと身を乗り出し待機する。その隣で高杉は戸惑いながらも大好きな先生の話を咀嚼している。
「そろそろ一番奥に到着するだろうかと予想したその時、奥からか細い声がしたんです。一瞬猫かとも思ったけれど、どうも人間のようだった。覗いてみると、子供がいたんです」
「…………子供?」
桂はツッコミの為に準備していた口を閉じて、改めて疑問符を浮かべた。
「はい、子供です。君たちと同じ位の年齢で、どうにも衰弱しているようでした。本当はこんなことをするのは良くないことですが、思わず拾ってしまいました」
「良くない……どうして良くないんですか?弱っている人を助けるのは良いことなのに」
高杉が初めて口を開いた。子供にとって確かに疑問に思うことだろう。松陽はほんの少しだけ眉尻を下げた。
「それは追々話そうか。
子供を拾ったからには立派に育ててあげたいけれど、大人である私だけでなく同年代の友達も成長する上では必要でしょう。君たちのマイナスにも決してならないと思います。
どうでしょう、その子供と仲良くしてくれませんか?」
「勿論です!」
「先生のお願いならいくらでも聞きます!」
間髪いれず答えた桂と、先を越されて桂を睨みつつ答える高杉。
元気だ、と微笑ましく思いながら、松陽はにっこりと微笑んだ。
「では……銀時、来て下さい」
松陽が扉に向け言うと、躊躇いがちにそれが開いた。
白い、人形の様な子供が姿を現すのと、二人の御曹司が顔を真っ赤にして固まるのは、ほぼ同時だった。
「名前が分からないようなので銀時とつけました。
銀時、彼は高杉晋助君、彼は桂小太郎君です」
銀時と呼ばれた子供は松陽の後ろに隠れながら、順に高杉と桂を緋色の瞳で追った。
顔を動かす度ふわりと揺れる髪は綿毛のように白い。松陽の服を握る指も、信じられない程細く白かった。
「ほら、銀時。二人に挨拶してくれますか?」
ぽん、と松陽の掌が銀時の頭に落ちる。
僅かに表情が固まったのが分かった。
「…………ぎ、銀時です」
「……良い名前だな。お前にピッタリじゃねぇか」
なんとか硬直から復活した高杉がにかっと笑う。
「俺は高杉晋助だ!」
「桂小太郎だ。小太郎と呼んでくれて構わない」
「銀時ー、こいつはホントはヅラだからな。だまされんなよ」
「ヅラじゃない、桂だ!全く、銀時が本当にそう覚えたらどうするんだ!」
いつものようにギャーギャー騒ぐ。微笑ましく思うが、銀時はこの状況に戸惑っているようだった。
松陽が二人の頭を軽く叩くと、一瞬で二人は口をつぐんだ。
「ほら、二人とも。銀時が困っているだろう?優しくしてあげて下さい」
「すみません先生!」
今度は高杉が間髪いれずに謝った。この二人は、松陽への反応速度を競っている節がある。それも、松陽が微笑ましく思う一因だった。
「銀時、小太郎だ、言ってみろ」
「こたろう」
「あっヅラてめえ!銀時!晋助だ晋助、言ってみろよ!」
「えー……しんすけ……?」
「おおっ」
三人は早くも打ち解けてきたようだった。銀時も、警戒心はあるものの元は人見知りをあまりしないタイプなのではないだろうか。
子供達は心配ないだろう。あとは、自分の兄を懐柔するだけだ。
三人を眺めながら、松陽は小さく笑みを浮かべた。
***
見事に一目惚れした二人は互いに牽制し合いながら時に坂本も交えて銀時くんを愛でることでしょう。
松陽先生の兄に松蔭さんというのを考えていました。割りとお茶目で奔放な松陽先生と違って苦労人でしっかり者のツッコミキャラ。正式な跡継ぎは彼で、若いながらも経営の手腕は相当のもの。唯我独尊の妻と苦労人の血を継いだ息子がいます。
小学校に上がってから出会う真選組の面々の設定とかも考えてましたが力尽きました。落ち着いた時にまた書きたいです。