Two hands | ナノ


「あああ桜!桜!」
「なっ何アレン君がそんな大興奮なんて珍しいな!どうしたの?」
「掲示見ましたか?僕バスケだったんですよバスケ!」
「えええっ嘘!すごいおめでとー!」
「ありがとうございます!うわぁ良かった、一時はどうなることかと思いました」
「先生あんなこと言ってたのによく希望聞いてくれたね!」
「ええ、感謝しないと。これで桜と一緒にバスケ出来ますねー!」
「うん、バスケの勝敗だけは男女別の総得点で決めるんだもんね。一緒にがんばろー!」

おー!とやけにテンションが高いアレン君と共に、私は握り拳を高々と突き上げた。私がアレン君をバスケに入れてもらうようしつこく先生に頼み込んだなんて、勿論秘密。

―――ぴんぽんぱんぽん♪

『えー球技祭実行委員から全クラスへお知らせします。各クラスのバスケ、バレー、ドッヂの代表者男女2名は、トーナメントを組むので昼休みの1時に会議室へ集まって下さい。繰り返します、球技祭委員会から…』




「「…ご、ごめん皆」」

教室に帰った私とアレン君は、深々とクラスメイトに頭を下げていた。クラスの3分の1、バスケの代表者決めじゃんけんに負けた私とアレン君は、つい先ほど会議室へとトーナメントを決めに行ってきた。しかし生憎私たちはくじ運すら持ち合わせていなかったらしく、3年2組、バスケ部の先輩が最も多いクラスに一回戦から当たってしまった。
ドッヂやバレーは1年生のクラスとあたっているというのに、どうして、なんでバスケだけ。

「ま…まあ仕方ないよ。桜を送りだしたの私たちだし」
「うう、ほんとごめん…私試合頑張るから…」
「気にすんなウォーカー、ゲームでは活躍してくれよ?」
「は、はい。3年生だろうと、みすみす点は取らせません」

反応は温かかったものの、皆の表情はどこか暗い。そりゃそうだろう、バスケだけ一回戦で敗退してちゃ、盛り上がりに欠ける。

「…なんだかなあ…僕じゃんけんで勝ったことあったかな」
「アレン君ってほんとじゃんけん弱いよねぇ…」
「…そんなしみじみ言わないでください。桜だって負けてるじゃないですか」
「私は本番に弱いだけなんですー。はいアレン君、じゃーんけーん」
「え、あっ、」

ぽん。

「………」
「ほら、私の勝ち。緊張しちゃうとどうもね、駄目なんだ」
「…もっかい、桜」
「ん。じゃーんけん」

ぽん。

「…もう、いっかい」

ぽん。

ぽん。

ぽん。

「……アレン君ってチョキ以外出したことある?」


#05 じゃんけん


20080620
どおりで勝てないわけです