Two hands | ナノ


じいいいい。纏わりつくような視線を感じて、アレンは読んでいた本から顔を上げた。すると、正面で腕を組みながら自分を見つめていたのは他でもない可愛い彼女で、僕は驚いて口を開いた。

「…へ?どうかしましたか、桜」
「うん。アレン君ってさ、背は小さいのに手はおっきいよね」
「背は小さいは余計ですよ」
「でもほんとに小さいじゃない、背の順前から何番目?」
「…三番目ですけど…いえ違います、僕は成長期が人より遅いんですって。これからぐんぐんと伸びますよそりゃもう巨神兵の如く」
「そんなアレン君嫌よ私」
「だいたい桜だってそんな大きくないじゃないですか」
「え、私に長身求めるの?アレン君より大きい方が良かった?」
「…話を戻しましょう。僕の手が?大きいですか?」
「ああうん、そう。前から思ってたんだけど、手はちゃんとおっきくて、男の子だなーって」
「そうですか…?」

両手のひらを目の前で開いて、じっと見つめるアレン。桜は組んでいた腕をおもむろに解くと、その開かれたアレンの手に合わせてみる。

「わ、」
「ほら、指が全然足りない。手足が大きい人って、将来背も大きくなるみたいだよ」
「…ええ、そうだといいですね」
「あーでも、あんまりおっきくなってもらっても困る…かも」
「どうして?」

重なった手がふっと離れたと思ったら、アレンの頬に桜の指がとんと触れる。

「これ以上身長差が開いたら、この綺麗な目が遠くなっちゃうから」

どきん。大きな瞳が本当に美しいものを見るように覗き込んでくるから、僕は緩みそうになった口元を必死に引き締め、その小さな手を自らの手で包み込むように握る。

「僕も、桜の顔は出来るだけ近くで見てたいな」

そう、そうやって頬っぺたが赤くなる瞬間も。そう言ってにっこり笑ってやれば、恥ずかしがって逸らされる顔とは裏腹に、手の中に閉じ込めた小さなそれは確かに僕を握り返した。


#01 大きさ比べ


20080608
学パロ連載始めました