マドモアゼルのブランチ | ナノ



by Luffy


ばたん!!

勢いよく扉を開けて、突如飛び込んできた喧しい男に目を向け、私は意識せずとも盛大に眉間にシワを刻んだ。静かに読書をするためにわざわざ図書室を選んだのに、堂々と邪魔をしに来たのは密かに想いを寄せる人だった。私は一瞬だけ怯んだが、すぐに気を奮い立たせて咳ばらいをする。

「ルフィ、うるさいです」
「あ、エマ!お前何してんだこんなとこで」
「図書室で本を読む以外にすることがありますか?」
「それより隠れるぞ!今ウソップとチョッパーから逃げてんだ、…うわっ、ウソップの声!」
「ち、ちょっ、何で私まで…っ、ん、んんッ」

話をまったく聞く気がない様子の彼に、口をもがっと押さえられて、机の下に引きずりこまれたと同時に、扉が再び開く音がした。思わずびくりと硬直し、束縛から逃れようともがいてみるものの。

「しー…」

見上げた先にルフィの瞳。目の前で静かにしろと人差し指を立てられる。近すぎる顔に鼓動が跳ね上がって、放してくれと訴えるようにこくこくと人形のように頷いたのに、よしとルフィは満足そうに言ってからも、逆に更に私を引き寄せ解放してくれなかった。体を抱き寄せる彼の腕が、他意がないからこそタチが悪すぎると思う。ウソップたちがルフィの名前を呼びながら探し回る気配を感じながら、早く出てってくれと目を閉じて願うばかりだ。でなければ血圧が上がりすぎて倒れてしまう。

「いねーぞウソップ!ここじゃねェみたいだ!」
「ああ…男部屋も見てみるか。行くぞチョッパー」
「「………」」

ぱたん。

扉が閉まる音の3秒後、ようやく離れたルフィの手によって自由になった口から深い溜息が洩れた。ひとつ緊張から解き放たれたことに安堵する。…いや、そういえばどうして私が緊張しなくちゃいけないんだろう、理不尽極まりない。その上、まだ私の背中に回ったままの腕を何とかするまで、私は安らぎを得られないのだ。

「……ルフィ、行きましたよ、二人」
「…ああ。もうちょっとここにいる」
「そ、…それは別にいいですけど、離してくださいってば」
「んー、いやなァ、抱き心地がよくて」
「は…はあ!?」

何を言い出すんだこの男は?そんなこと好きな人に言われて、何とも思わない女なんているわけないのに!私が顔を赤くして絶句している間にも、ルフィはするりと私の手に重なって、驚いた指が今まで掴んでいた本を取り落とす。

「やっ…ちょっと…どういう…つもり…」
「お前の手、ふわふわだなァ」

そんなふざけたことを言うルフィが、対して意識もせず私をひどく翻弄するのが悔しかった。おかげで顔が熱くて堪らない。精一杯の強がりで睨んでやるつもりだったのに、見上げた彼がへらりとあんまり無邪気に笑うので、私は息も詰まるような鼓動の速さに言葉さえ失ってしまうのだ。




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