マドモアゼルのブランチ | ナノ



by Zoro


「ストップ」

ぐ、と唇に指を当てられて、キスする寸前でお預けを食らわされたゾロの気圧が瞬く間に下がるのをひしひしと感じた。何でだよ、と直ぐさま理由を問われ、私は肩を竦めてそれに答える。

「ゾロ、お酒臭いんだもの。朝から呑んだでしょう」
「気にすんな今更、そんなこと」

ぐいと腰を引き寄せられて、な、と耳に吹き込まれる。はあ、と深く息を吐いて、私は彼の要求には答えず、逞しい裸の胸にぎゅっと左耳と左頬を押し付けた。どくん。どくん。私の何倍も強い生命の音。手の平をぺたりと当てながら、私は独り言のように呟く。

「ゾロの中はきっと、お酒と野望で一杯なのね」

私の入る隙間なんて、ないようにすら感じるわ。私の言葉を聞き取ったゾロは、訝しげに首を軽く傾げる。

「何が言いてェ」

くす、と私は笑い声混じりにまた囁く。彼の心臓にそっと耳打ちするように。

「貴方の中に入り込めたらいいのに」

ドクンッ、と強く鼓動が脈打つのを聞いておかしくなった。はは、動揺してるのかしら、可愛い人ね。ゾロの硬い指が私の髪に入り込み、頭を抱えるようにする。私は視線を少しだけ上げて、その太い腕に巻かれた黒い布をうっとりと眺めた。

「私は貴方の体温で甘く融けて、その苦い口を美味しくするの。それからならキスをしてもいいわ。構わない?」
「…やめろ馬鹿。お前を食う予定はまだねェよ」

前髪を掻き上げられて、ちゅ、と可愛らしいキスをされる。残念、とくすくす笑う私の耳に、呆れた、とでも言いたげなゾロの溜息が触れた。




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