俺様ただいま高校2年生、青春真っ盛り。
自他共に認める恋多きオトコだ。



「入試のとき先輩を見て、好きになっちゃいました…っ」



うーん、なかなか。
体育館裏なんてベタな場所で、黒髪ボブの女の子が頬染めながら付き合ってくださいと俺様に勢いよく腰を曲げる。
うん、合格。ちょう可愛い。



「あの、あの、迷惑ですか……っ」

「え?」



何も言わない俺様を見兼ねて泣きそうな顔しながら俯いた彼女は、四月に入学してきたばかりの一年生だ。どうやらありがたい事に入試のときに見掛けた俺様に一目惚れしてくれたらしい。モテる男はツライね。
なにがツライかって、こんな可愛い子の告白を断らなくちゃいけないから。だって俺様彼女の存在知ったの今だもん。



「先輩きっとあたしのこと知らないと思ったけど……でも、どうしても伝えたくて……」



ね、もう泣きそう。かわいそうだよね。
でも俺様、女の子泣かせんの趣味じゃないからさ、ここで普通のモテる男と違う行動をします。



「そんなことない。すっごい嬉しい。俺様、君に一目惚れしちゃった」



どんな女も口を揃えて可愛いと言った自慢のスマイルで、泣きそうな彼女の手をとれば、ぱああ、と涙なんか吹っ飛ばした笑顔で抱き付かれた。



「嬉しい、先輩っ」

「うん、俺様も」



ちなみに、名前も知らない女と会ったその場でお付き合いするのは人生で今回が6回目だったりしちゃう。



「ね、人来ちゃうよ……いいの?」

「いい、先輩ともっとこうしていたい…」



いくら体育館裏で人気が少ないっていっても、誰も通らないわけじゃない。
そっと小さな背中に手を回して耳元で囁けば、彼女は顔を俺様の胸に押し付けて背中に回した腕の力を余計に強めた。
あ、そういえば名前聞いてない、と場違いなことを考えて好きにさせておけば、案の定、向かいの廊下を男子生徒が歩いて来た。



「…………」



目立つ赤髪に長い前髪に隠れた顔の半分は伺えないがきっとなかなかの美形。高い身長に見合った長い手足と、なかなかに筋肉のついた上半身。廊下を歩く足取りは何故かとてもしっかりしていた。



「ッッーー!!?」



あ、かっこいいかもと思った瞬間に腰から頭てっぺんに走った甘い痺れに、未だ抱き付いたままだった彼女を勢いよくひっぺがした。



「っ、せんぱ、」

「ごめん!別れて!」

「っ、えぇ!?」



今までに破局した最短期間は三日な俺様。
付き合って二分足らずで別れるという新記録を達成。ごめん一年生。



「ねぇあんた!」

「?」



後ろで一年生が何か叫んでいるような気がするが、とりあえず無視して赤髪の男子の手首をガッシリ掴む。
驚いたように、しかし意外と冷静に振り向いた瞬間に前髪の隙間から見えた切れ長の瞳に、また甘い痺れが走る。



「俺様、猿飛佐助って言うんだけど、」



恋多きオトコ猿飛佐助。
新たな恋の予感がした。