小説 | ナノ


アイツはとても男癖が悪い。練習のない日に俺たちはほぼ毎日会ったりしてる。だけど、


「ごめんって京介くん!!」
「……」
「マジで反省してるから!本当!ごめん!!」
「これで何回目だ」
「本当、わかってるから!!ごめん!!」


頭を安っぽくたくさん下げて謝るマサキ。またマサキの悪い癖が出た。基本的になんにんもとっかえひっかえするマサキでも、今まではサッカー部の人には手を出したことがなかった。だが今回は誰かとは言わないが、先輩にまでいったらしい。


「またこれか…。俺はお前のこと信じてるけど、さすがに何回も続くと俺も、」
「俺だって!っていうか一番好きなのは京介くんだよ!!」
「…、」


毎度毎度よく軽くこう言えるなと思う。言った言葉がすぐ消えるように、マサキの好きという言葉の信用度は低い。ごめんという言葉も息をするかのように言ってくる。何回言っても直らないし、多分直す気もないんだろう。さすがに俺だって疲れてきている。


「本当だな?」
「本当だって!俺京介くんいないとダメなんだよ!」
「…そうか」


マサキが抱き着いてこようとするが、それを思わず突き放してしまった。「えっ、」と意外だという声で言われ、疲れてるんだととっさに返す。理解してくれたようで「そうだよな、疲れたよな」と言われ、今日は帰ろうということになった。



もう正直疲れた。俺はマサキが好きだが、アイツの好きにもう気持ちが感じられなくなってきている。自分の気持ちだって疑いたくなってくるくらいだ。最初はそんなやつじゃなかったけど、付き合い始めてからそんな風になり始めた。一回目は信じてやれたけど…もう何回目だろうか。数えるのも嫌になってくる。信じるのも、好きでいるのも、注意するのも疲れた。
…それから一週間ほど。教室で天馬がこそこそと話しかけてきた。


「なあ、剣城…」
「なんだ」
「狩屋って霧野先輩のこと好きなのかな?」
「ブッ!?……どういうことだ?」
「いや、昨日偶然見ちゃったんだけど、狩屋が『俺、霧野先輩のこと好きなんです!』って言ってて」
「……」
「そのあと霧野先輩と狩屋が抱き合ってるの見ちゃってさ…。その後は…、なんかキスしてたからそのあと見てないんだけど」
「それは…どうなんだろうな…」
「罰ゲームだよねきっと!」
「なんの罰ゲームだ」
「あっはっは!!知らないよそんなのー」


笑っていると西園が合流してきたのでなんでもないと二人でごまかす。笑っているけど俺の心はまた疲れてきた。思い出したくなかった。その為、マサキと一週間くらいまともに話をしていない。その間にまたこんなことになるとはな。
家に帰ってももうアイツに確認しようとか、そういう風に思えなかった。携帯を開いたら思わず電話をかけていた。


『白竜』
『おう、剣城か!珍しいな!』
『…そうだな』
『なんだ、どうした。お前からかけてきて機嫌が悪いとかないよな?』
『いや、そういうわけじゃないんだ』
『声が暗いからまた怒ってるのかと思ったぞ!!じゃあなんだ?』
『いや…明日でいいからちょっと会えないかと思っただけなんだが…』
『んー、いいけど…どうしたんだよ』
『いや、なんでもないんだ。ちょっとお前の(アホな)顔が見たくなった』
『お、おおおお…。なんで急に素直になったんだよ剣城!』
『素直に?誰がだ?』
『お前だよバカ!』
『バカはお前だ』
『バカじゃない!究極だ!』


もう疲れた。誰でもいいから裏切らないで俺だけを見ていてくれ。それにアイツの思いが本当ならこれも許してくれるよな。


『おい、剣城!聞いてるか!?』
『ああ、聞いてない』
『聞けよ!!』
『ああ…白竜、』
『は?』
『好きだ』


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