この気持ちを伝えるまでに












『もうすぐバレンタイン・・・。』




カレンダーを見つめて呟く私は、少しだけ迷っていた。




「先輩、なんか怖いっすわ。」





後ろから、財前が話しかけてくるが、この際無視。






だって。
財前と約束したんだもん。

本人は覚えてないかもしれないけど・・・。











それは、ある日のこと・・・。



「先輩。好きな人とかおります??」



『いきなり、入り込んでくるね。』



「まぁ。きにしてるんですわ。」



そんなことを、サラリと言ってのける財前は、涼しい顔をしていた。





『居ると言ったらいますね。』



「標準語とかキモいっすわ。」




折角答えたんだから、そんなこと言わないで欲しいな〜〜。





「バレンタインとかどうしますの??」

『あげない。』




「即答ですやん。」




あげるつもりなんてないし、頂戴と言われてもあげない。

だって、下手くそなんだよね。

料理ってのが・・・。


そんなことバレたくないし。







「じゃあ。」



ふわっと、私の前に財前の顔が近づく。




『おわ!! 急に近づくな――。ビックリするじゃん。』


心臓がドキドキするのが止められない。

誰だって、好きな人の顔が近づいてきたらビックリするでしょ!?






そんな私を尻目に、財前はフッと笑って。


「俺にくれまへんか??」



なんて言って見せる。




『・・・・。いやだ。』



「条件付きでも良いっすわ。」





少し考えた私だけど、やっぱりバレたくない。

でも、条件付きなら・・・




『ウチが、志望校合格したら、あげるよ。』



少し嫌々ながら、約束を交わす。




「ほな、先輩が合格するの待ってますわ。」




財前も約束を受ける。



ある日交わした2人の約束。













・・・・・・・・。

まぁ。そんなこんなで。


もうすぐ、バレンタインだ。




どうしよう!?!?

何にも考えてない・・・。





「そう言えばみょうじ先輩。」



一人で悶々と考えていると、何時の間にやら財前が隣に立っていた。



『どうかしました??』



もしかすると... という思いが私の中を横切ったので
少しだけとぼけてみる。






「先輩覚えとります?? あの約束。」




『うわっ。覚えてんの?!』




「まぁ、一応。ついでに、先輩が合格したんも知っとります。」




『マジか。』






そうなんだよ。

私は、無事合格した。




ただ...

君とバレンタインが待っていた。






「待っとりますよ?」


少し微笑みながら、“ほな”と言って、財前は練習に行ってしまった。








『うわっ。どないしよ・・・。』




このまま、義理として渡しちゃうのか
いっその事、告白しちゃおうか。



私は、また一人で悶々と考えていた。








この気持ちを伝えるまでに
あなたとの距離をもう少し近づけたいな。





2012/02/07   完成









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