「ああああ…」
「たいちょ?どったの?」
「目がピクピクすんねん」
「ぴくぴく?」
疲れが溜まっていたのか、目の痙攣が止まらない。
最近はやたらと虚が出現するわ、部下は単純なミスばかりやらかすわ、惣右介は現世に行ってるわで仕事乱舞の日々だった。
はぁぁと一つため息をつき、手の平で目を覆い、机に肘をつく。
仕方あらへんな、こんままかて埒あかんわ。
そう思い、不意に立ち上がろうとした。
「たいちょ、だいじょーぶ?」
心配そうな声に驚き、顔をあげた。
そこにあったのは目に涙を浮かべていかにも"心配しています"という表情を浮かべている部下の顔。
いつもの元気一杯の様子からは想像できないくらいのしょんぼり具合に思わず笑ってしまった。
「なんや、心配してくれるんか?」
「………心配だもん」
「そら、おおきに」
なんや素直やん。なんて思いながら、ここまで心配してくれる部下にこれ以上心配をかけるまい、と仮眠を取ることにした。
「ほんなら、寝るわ。仕事しとれよ。」
「ん」
「ええ子」
「…ん」
目を細め、部下の頭を一撫ですると、不意に羽織りの裾を引かれた。
「ん?」
「たいちょ、」
「なんや……っ!?」
だんだんと近づいてくる唇。
いきなりのことで固まって微動だにしない俺の瞼に、やわらかな唇が一瞬だけ触れた。
「ななななっ!?」
「早く直してね」
「ああ!?」
「たいちょいないとつまんないっ」
ぷくーっと頬を膨らませた後にニヤリと笑った君は確信犯。
ところが、俺と同じように耳まで真っ赤な君は、嘘が苦手な確信犯。
(たいちょを困らす瞼なんて嫌いよ。だから私のキスで早く治してあげるわ。私たいちょのぜんぶが好きなんだから、嫌いなとこがあったらこまるでしょ?)
(なーんて、素直じゃないのは私が1番知ってるわ)
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