「ねーねーたいちょ」
「なんや」
「この漢字、なんて読むの?」
「んぁ、あぁ"しろけし"や」
「"しろけし"?」
「拳西のトコの隊花やろ」
「ふーん、六車隊長の…」
何の資料を見てんだか。
先程、サボりの反省文を書かせた側からサボり始めたので、仕方なく俺の執務室まで引っ張って来て隣に座らせ、筆を握らせ反省文を書かせていた。
なのにいつの間にか俺の机の上に散らばった資料で遊びはじめやがった。
「たいちょ、これは」
「"りんどう"」
「これは」
「"あざみ"」
「これは」
「"きんせんか"」
そういえば、いろんな隊の紹介雑誌みたいなのを作るとか言ってたか。
先程からこいつが読んでんのはそのサンプルか。
そこで目に入ったのは、我が五番隊の隊花"馬酔木"の文字。
こいつ、読めるんかいな?
気になって、そこを指差しみると、不意にぶつかる指先。
「へ?」
「は?」
互いに動きがぴたりと止まり、お互いに静かに見つめあう。
「お前、やっぱ読めへんのか」
「ち、ちがうもん!!」
頭を痛いくらいぶんぶん振り回し、若干涙目になって俺を見上げてきた。
「"あしび"でしょ?」
「んぁ、おう…」
「……ちゃんと読めるもん」
妙にしゅんとへこたれてるもんだから、不意に奴の頭をぽんぽんと撫でてやった。
すると、離した手をじーっと見てくる。
「なんや?」
「たいちょ、指きれいだね」
「そうか?」
「うん」
膝に置いた俺の手の指先をちょこんと握り、お前はまた俺を見上げた。
「大好きな隊花だよ。読めないわけないでしょ?」
おっしゃるとおりです。
ごめんなさい。
だからかわいい行動はやめてください。
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