「たーいちょっ!」
「なんや」
「どこまで行くんですかー…」
「もうちょっとやから、しゃんと歩けや」
「もう歩けなーい!」
「ったく……」
虚討伐の一環で流魂街まで出てきたはいいが、何せ回りは山、山、山。
さすが百番に近い辺りのせいか、その険しさも一際ひどい。
本来ならば副官と来なければならないものを、藍染は別件で動いているため、仕方なく三席のこいつを連れてきたわけだが、先程からぶーぶーと文句ばかり。
連れてこなきゃよかった。
「わーった、休憩にしたるわ」
「やったーっ!!!」
「………て、なんで足袋脱いでんねん」
「いやぁ…靴擦れがひどくって……」
「……………。」
なんでそれを早く言わないのか、と言おうにも言えなくて。
地面に座りこむ奴の前にしゃがんで足を掴んだ。
「たいちょ?」
「………見してみ」
「うぁ、はい」
足首を掴んでみると、えらく華奢で驚いた。
そのまま上にあげると、ちょうど踵の部分が赤く滲んでいるのが見えた。
「えらい痛そうやな」
「あ、やっぱり?」
「やっぱりやあらへんわ。ったく……。」
「えへへ」
はあ、とため息をつくと、ポケットからハンカチを取り出し、傷口を包むように綺麗に巻いていく。
なるべく傷口に負担をかけないように、優しく、優しく。
そんな様子を上からじーっと見てくる視線が痛い。
「な、なんや…」
「たいちょ、」
「ん、」
「そのミサンガね、」
「んあぁ、コレか?」
「それ、」
俺の掴んでいる足首には、金色と白の紐で作られたミサンガがあった。
「金色はたいちょの髪」
「は?」
「白は隊花の馬酔木の色」
「…………。」
俺を見つめるその瞳は、いつもの無邪気な笑顔の部下のものではない。
「私、いつでも、たいちょの無事を願ってるんですよ。………だからね、……。」
馬鹿なことをいう部下には、げんこつ一発じゃ足りない。
「…代わりになるのなら、私はいくらでも怪我していいよ」そんなの、だれも望んでない。
ただ、君の、その、純粋過ぎる願いは、たまらなく愛おしかった。
きみのあしくびをつかむちからがつよくなった。
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