幼心の残る君 | ナノ












「なんだこの紙屑は」


「紙屑じゃないわ、現世の子供のお遊びで"折り紙"っていうの」


「折り紙?」




いつものように仕事途中の休憩時間に立ち寄ると、いつも俺が座って腰掛けの上に散らばっている何かを拾い集めているあいつがいた。

今日は天気も良く、絶好の団子日和だったらしく、腰掛けやら馬鹿高い椅子やらを全て表にだしていて、その上には紙屑と一緒に、どこから流れてきたのか、たくさんの花びらが乗っていた。






「流魂街の子供たちが来ていたの」



一度奥に引っ込んで、団子と熱々のお茶をお盆に乗せて持ってきたあいつは、いつものように俺の隣に腰掛けて、その"折り紙"とやらを見せてくれた。




「これは、狐。これは、猫。」


「紙なんざ折って何が楽しいんだ?」


「ただの紙が変化するんだもの。子供から見ればすごく興味深いと思うわ。」


「だいたい、狐と猫の違いがわからねぇ」


「そこは御愛嬌」



にっこり笑ったあいつは、立ち上がると、たくさんの折り紙を一つ一つ丁寧に暖簾につけていった。俺は熱い茶を啜りながら、そんなあいつの後ろ姿を見る。細っこい肩に何を背負ってんだか。

だいたい子供たちをただ呼んで折り紙をしていただけじゃないだろうに。腹が減ってる子供たちに団子を気兼ねなく食べさせるために。自分だって、んな裕福じゃねぇのによ。むしろ、しきりに経営がやばいとか言ってるくせに。




「じゃあ、拳西にはこれをプレゼントしちゃいまーす」


「なんだこれ?」


「ハートでーす、かわいいでしょ?」




全て飾り終えたあいつは、また俺の隣に座ると、ぐいっと腕を引っ張り手の平を開かせると、何か小さいものを転がした。





「ほぉー…、よく出来てんじゃねぇか」


「私からの愛のプレゼント」


「へいへい」




繋がった手の平は、もう少しそのままで。









紙で出来たハートたち


いつか、本物をね?









「もっと欲しかったら、もっと団子を食べなさい」
「だったら無料で団子を振る舞うなよ」
「あら、私は子供たちから愛と引き換えに団子を振る舞ってるのよ」
「なら俺も愛で支払…」
「あんたの愛は安物よ」
「てめぇ…」