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決戦の日。
さすが世界中でも名の知れた企業の息子。家が半端なくでかい。
寮生活をしているため、久しぶりに実家に戻ったという会長が緊張しているのを見てくすりと笑う副会長。
栗色のロングヘアーのウィッグをかぶり、メイクを施した副会長は完璧に女にしか見えなかった。
「真珠(まじゅ)」
「なあに?」
「…やべーお前くそ可愛い」
副会長――真珠の女装がクリティカルヒットだった会長だった。
「ふふ、プラネタリウム♪有料とかにしてどんどんお客さん呼びたいなー」
「…おいもしかして…、部屋でできるお手軽セットとかじゃなくって…」
「なに言ってんのやなくん。科学館にあるみたいなおっきいのに決まってるでしょ?」
「おま、おい、ちょ、え…!?」
やなくん、こと柳会長が驚愕の声を上げる。
どうしてこいつはこんなえげつないことを小首をかしげて言えるんだ…!小悪魔すぎる…!!
真珠のお金の執着心に心の底から恐怖を抱いた柳だった。
「お兄ちゃんもういるの?」
「ああ。じゃ、頼むぞ真珠」
「まかせてやなくん。ちゅーまでならできるから」
「…おう」
玄関の前で拳をごつんと突き立てる。
中を開くと、すでに長身のスーツ姿の男前が長い脚を組み、英字新聞を読んで優雅にコーヒーを口にしていた。
顔が見えないけれど、明らかに一般とはかけはなれたオーラがにじみ出ている。
「こんにちわ」
「ただいま、兄貴」
その言葉にようやく新聞から目を離し顔を見上げた。
ばちり、と真珠と勢いよく目があい、どきんと驚きに高鳴る心臓。
思わずきゅ、と柳の手を固くにぎる。
「…おかえり。ああ、そちらが柳の恋人か」
「はい、初めまして、柳さんとお付き合いさせていただいております、高坂真珠(こうさか・まじゅ)と申します」
「……驚いた。こんな美人と付き合ってるのか、柳は」
「ま、まあな」
柳のしどろもどろの返答に、今度はぎゅうと隠れて背中をつねる真珠。
(いって…!)
(ばか!なんでやなくんがそんなしどろもどろなの!)
(逆になんでお前がそんな冷静なんだよ…)
(プ ラ ネ タ リ ウ(あーわかったみなまで言うな!)
「…随分仲がいいんだね?」
お兄さんの目の前だというのに、こそこそと会話をする二人に苦笑いするお兄さん。
「す、すみません…」
「いや、いいよ。俺は柳の兄の櫂(かい)です。こんな可愛い恋人いるなんて妬けるね」
「ふふふ」
よし、これでミッションはクリアでしょ。
真珠は愛想笑いをしながら、心の中でそんなことを思っていた。
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