03
「りーりちゃん、たーだいま」
「……」
まあ挨拶を無視されるのはいつものことだから、それほど気にせずに寝室に行ってりりちゃんが寝ているはずのベッドを見る。
だけどそこにはりりちゃんはいなくて。
「…?」
そう思うと、ガタンと後ろから物音がして。
はっと振り向いたとき、りりちゃんがドアの物陰から飛び出して逃げるところだった。
「りりちゃ…!?」
わけがわからない俺は、とりあえず本能で逃げるりりちゃんを捕まえて抱きしめる。
腕の中の存在は、泣いていた。
「どうしたの、りりちゃ…!なんで泣いてんの…!?」
何も言わずにぼろぼろと泣いているりりちゃんに、俺はパニック。
メンタルが弱いって知ってたけど、こんな大粒の涙を流してるりりちゃんを見るのは、出会って初めてのことだったから。
「…な、んでもない…離せ、バカ…っ!」
「なんでもなくなんかないでしょ、俺はりりちゃんが大切―――」
「うそつきっ!!」
「…え?」
そういうと、キッと睨まれる。
正直涙目で睨まれてもムラムラするだけなのにね。
「て、んこうせいに…キス、してた……っ!!」
「……はあ…?」
「分かってるもんっ、ホントは久輝が僕にかまうのは遊びの一環だったってこと…っ!!」
なに言ってるの、この子は。
「りりちゃん、まず、俺は転校生にキスしてません」
「う―――」
「嘘じゃない。耳元で死ねってゆってただけ。どーせりりちゃん、俺の背中で見れなかったんでしょ」
「…なに、それ…」
「ほんとだよ。俺の真横で見てた生徒今から捕まえて言わせようか?」
「………じゃあ、捕まえてきて」
さすがりりちゃん。ここで拒否らないで捕まえさせるなんてね。
そうして誤解が解けた俺は、今ごろごろとりりちゃんと一緒にベッドに寝ている。
思えばすぐにえっちに持ち込んじゃってたから、こうやってただひたすらごろごろしているなんて、なかったかも。
らぶらぶな恋人だねぇ。そう言ったら、照れたようにりりちゃんが俺の頭を小突いた。
「…バカ犬…」
「ふふ」
「今度ばかなことしたら、捨ててやるから…」
だけどね、りりちゃん。
首輪についてる鎖が、雁字搦めにその手綱を持ってるりりちゃんに巻きついて離れないってこと。
――――まだ、わかってないだろーね。
おわり
女王様むずかしい!
あと1話で短編はおわりー!
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