03


そうして待ちに待ったセレモニー。
大きな会場を貸し切って、豪華なパーティが開かれた。
と言ってもこれはまだ序の口らしく、後々今度は生徒全員とOBを呼んでそれはそれは壮大なパーティをするらしい。生徒全員プラスアルファが収容できる会場ってあるのかな。

「紫鶴」
「…ぁ、ヒノエ」
「どうした、ぼーっとして」
「いや、別に…」

そうか、と納得いかない顔をしているけれど、僕にとってはそんなの気にしている暇はない。
一緒の会場に、

「吹石くん、今季のドラマもとてもよかったよ!今度8歳になる娘が君のファンらしくてね、どうだい、ぜひ今度食事でも!」
「はは、ありがとうございます。スケジュールが開き次第また連絡させていただきますね」
「さすが売れっ子はちがうなあ!ははは!!」

ふくよかな男性と楽しそうに談笑している、生吹石紫呉さんがいるのだから―――っ!!!
どうしよう、動いてる話してる笑ってる…!!!それだけで、僕にとっては涙が出るほどの奇跡。
ヒノエの隣に突っ立って、ぼーっとただひたすら吹石さんを見つめていた時、ヒノエが突然大声で吹石さんを大声で呼んだ。その声にぱちくりとしながら振り向き、ヒノエの存在に気づいた吹石さんが人ごみの中をかき分けて、爽やかな笑顔を携えて目の前に来た。

「…ああ、ヒノエ」
「お久しぶりです、紫呉サン」
「ああ。そう見ると本当に学生なんだね」
「なに言ってるんですか、俺まだ17ですからね」
「いやー、あんだけ浮名を流してるからね…俺よりも貫禄あるよ、その点では」
「はははっ」

言葉だけ聞いてると殺伐としてて、なんだか嫌味っぽいけど、にこやかな空気で二人は会話している。
だけど僕はもう目の前の生吹石さんに頭が混乱してて…。

「そちらの方は?」
「ああ、彼はこの学園の副会長ですよ」
「は、はじめまして、第50代生徒会副会長を務めます、若桜紫鶴(わかさ・しづる)です…」
「…ワカサ?…君、もしかして実家は京都にある呉服屋かな?」
「は、はいっ!」
「昔撮影で君の家の呉服を使わせていただいたんだよ。そういえばあのとき、小さくて可愛い子がいたけど…男の子だったんだ…」
「は、はい…っ」

覚えてくれてた、覚えてくれてた…っ!!
それだけで本当に涙が出そうになる。

「今でも可愛い顔してるもんね」
「えっ――!」
「…紫呉サン、こいつにあんまちょっかいかけないでくださいよ。俺の恋人なんですから」
「ちょっとヒノエ――っ!?」
「ああ、道理でヒノエが不機嫌なわけか」

それまで黙っていたヒノエで急にすねたように横槍を入れてくる。しかも吹石さんの目の前で男同士で付き合ってることをばらすなんて―――っ!

「紫呉サンってゲイでしょ?」
「……君、ばっさりといくね」
「そうでしょ?」
「…まあ、そうだね」
「え…っ」

吹石さんが、ゲイ………?
だから熱愛報道が少なかったんだ…。それは恋愛対象が女性じゃなかったから…?

「大体ここの学園の卒業生って、男が大丈夫かそれ目当ての人がどっちかですからね」
「そうなんだ」
「まあ…例外もいるみたいですけど」
「…そうみたいだね」

ふふ、って含み笑いで吹石さんに笑われたら、顔は真っ赤になるよ。





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